2014年1月11日 正午ー午後4時
東京・ルノアール銀座会議室
「2030 日本再生の6大シナリオ」の提言を受けて
文芸春秋2014年新年号問題提起論文要旨・全文はこちら⇒
主催:「アジア共生ビジョンを語る会」
協力: (財)人間自然科学研究所、NPO未来構想戦略フォーラム
(社)移民政策研究所、 国際アジア共同体学会
参加者:
小松 昭夫 (財)人間自然科学研究所 理事長 小松電機産業(株)社長
久山 純弘 元国連事務次長補 , 前国連大学客員教授
坂中 英徳 (社)移民政策研究所所長 元東京出入国管理局長
進藤 榮一 筑波大学名誉教授 国際共同体学会会長
大脇準一郎 NPO法人 未来構想戦略フォーラム代表、地球市民機構副理事長
池永 達夫 政界往来編集長
大脇 文春新年号で「2030日本再生の6大シナリオ」が掲載された。
その「カウンタープロポーザル」を出したかった。
山本七平氏は、「日本人は時間軸がない。空間的平行移動はうまくても
歴史的思考が弱い民族だ」と断言していた。(注:1)
2020年というのは、中期目標にすぎない。日本文明を世界文明の中でどう
位置づけるか、歴史観が無い。世界史の中で、国家ビジョンをデザインする
必要がある。
イノベイション力にしても技術や経済に偏り、文化、精神の歴史に触れて
おらず、総合性にかける。 対外発信というが、受身の発信でしかない。世
界を変えていく、グローバルな大胆な発想がない。 一太郎、世界性がない
からワードにやられた。
「すべては人材に収斂」。人材育成という限り、家庭、職場、社会、学校
教育の役割にも触れる必要がある。36年前の「10年後の日本の国家目標にお
いては大学界の役割の役割に焦点を当てた。遅まきながら近年「国際的人材
育成」の動きが大学界にみられることは希望を感じる。
(注2:「日本の長期ビジョンを語ろう!」)
坂中 人口崩壊が迫る日本が生き残るためには、2050年までに移民を10
00万人受け入れないといけない。 それだのに人口激減に特効薬はない
という前提で議論を始めているはおかしい。人口を増やす方法は、出生率
を上げるか、外国から入れるしかない。
これから100年間、生まれる人は減る一方。高齢化するといってもすべ
ての人が、100歳まで生きられるというわけにはゆかない。残された道は
外から人間を受け入れるしかないのが明白である。私は、移民の理想的な
受け入れのシステムを理論的には完成させた。受け入れのシステムを構築
するか、理論的には完成している。 人口減少が何を意味するか、その恐ろ
しさを学者や知識人はわかっていない。 (注:3「日本型移民国家試案」)
アベノミクスといっても、円安、規制緩和でここまできている。あとは
成長戦略だ。しかし、人口が減少する国に、内外の投資家は投資しない。
消費が減るのはとめようがない。 「アベノミックスで欠けている矢は、
移民政策」と、ウオール・ストリート・ジャーナルは社説で主張した。し
かし、日本では移民政策がタブー視されている。
人間が居てこそ社会である。人間が居なくなれば、サルなどの動物が横
行し、人間社会は消滅。限界集落問題とはわけが違う。 産業が潰れ、社
会が潰れて、金があっても意味をなさない。安保保障・治安問題など、全
部がだめになる。 日本列島の人口が空白地帯になれば、近隣諸国から
大挙して入ってくる。これは止めようがない。 50年後、100年後の日本の
姿は、はっきり見通せる。2030年に人口は、まだ激減しない。しかし、
2040年、2050年には激減して行く。毎年100万人の政令指定都市が
ごっそり減っていく。
2005年から人口減少社会に入った。 2060年、老人が4.4人、14歳
以下は1人に割合になる。そういう時代が来ようとしている。 移民政策を
とって50年間で1000万人入れる。そうすれば100年先に7000万人の
人口を維持することが可能になると予想できる。 移民大国の米国・英国、
フランスでは、移民同志の結婚で出生率2.00を超えている。米黒人人口も
減少。
日本文化は雑種文化、純粋文化は1つもない。しかし、日本文化は世界
に通用する普遍的なものになっている。 西洋人の立てた移民政策は、多
文化共生の思想がある。 人類の多様性を強調するもの。私は人類の共通
性を強調する多族共同体論。これは進化論と考えと一致する。 日本人の
自然観には動物、植物にも神が宿る。それが日本人の宗教心。
西洋人はそれがない。しかし、進化論は人類の前には動物、その前は植
物とか物質。 植物、動物は、同じ生命体としての共通性があると認識。
人類は同じ人間として相互理解もできるし、相互理解もできる。だから地
球共同体の形成も夢物語ではない。 こうした論理は、アジアではパキス
タン、インド人は理解している。
5年前、外国人人材交流推進材議員連盟を中川秀直会長が立ち上げた。
しかし、1000万人の移民構想は民主党政権で無視された。昨年、小池
百合子会長の国際人材議員連盟が発足した。その活躍に期待する。
大脇 フリードマンやハイエクと直接、話す機会があった。所詮「人間は時
代の申し子」生まれ育った環境を超えるのは容易でない。 欧米先進文
化、上流階級だけでは世界を変えられないとの実感が正直な印象であっ
た。中谷巌が「新しい経済システム」を説いている。既存の枠を超える
所に創造の世界が開けるが、糸川先生の発想はまさにその世界を闊歩す
る人であった。
たとえば、現在の介護システムは、借金国家のシナリオを描いている。
人生というのは定年制ではなく、生涯現役でないといけない。人生は勉
強時代、労働時代、余生の3分法ではだめ。24時間、働く思想が大事
になる。特に「地球温暖化問題はどうなるか?」を糸川先生に聞いた時、
「原・水爆で地軸を変えることができる」と述べられた時、その奇想天
外な発想に衝撃を受けたことを今も忘れない。
坂中 80過ぎたら安楽死の選択権も必要。
大脇 病院が“現代の姥捨て山”になっている。タブーを排除し尊厳死も。
久山 坂中氏が言われる「人類共同体」的発想をベースに日本として移民政策
を推進することに何等異存はないが、それと同時に、わが国として人口減
という現実を踏まえた諸施策等も必要。尚、移民政策に関しては、例えば
東南アジアからの看護師・介護士志望者等に対して取敢えずはもっと門戸
を開放すべきであろう。
進藤 戦略性を言うなら、時間軸だけでなく連携軸がない。勝ち抜くには、ど
こと連携組むかが重要になる。これが欠けている。 留学生も活力の源泉
になる。1970年代の終わり、筑波大学には韓国人ひとりしか留学生が
いなかった。インドネシアから国費留学生が来たことがあるが、追い返そ
うとした。だが、どうしても入りたいというので、入れた。朝から晩まで、
勉強していた。そのパワーはすごいものがある、その彼が、日本に再来し
インドネシア大使になる。
当初、筑波大学では、白人はホワイトを入れなかった。台湾からなど、
1000人のうち800人がアジアからだ。これが財産になっている。
日本が発展するには、アジア連携しかない。東アジア共同体、中曽根会
長、ASEAN+3、一昨年、北京で、昨年マレーシアで開催。強調され
たのは「コネクティビティー」(連結性)。
人とモノ、金(これまでモノと金)。ヒューマン・トゥ・ヒューマンが
重要。インフラ整備でメコンデルタを物流回廊に整備、ネットワーク分業
の仕組みを作る。ビザ緩和など政策提言。
坂中 移民1000万人(若い活力)の受け入れも大変。しかし、人口が30
00万人減る方がその何倍も大変。リニアモーター作っても空気を運ぶだ
けで、戦略性がない。 生活水準を落とし、しかも80まで働く覚悟が求
められる。昔は質素な生活の満足し、幸福を味わっていた時代があった。
大脇 戦争こそ最大の環境破壊、公害、エネルギーの浪費の元凶。
坂中 移民政策と安全保障、同じ。1000万人の枠。相撲だけでも、モンゴ
ルに関心を持つようになる。安保とも不可分一体。安保の金を削ってもい
い。安倍政権にはソフトパワーが弱い。
久山 「日本再生のシナリオ」は緊急に必要なわが国の長期ビジョンに関する
インプットとしての意義をもつものではあるが、見落とされている問題も
あり、例えばエネルギー問題その他も議論の対象とすべき。(注:4)
進藤 アベノミクス、円安で自動車産業には効く。2本目の矢、能動的財政出
動、これはケインズだ。3本目の成長戦略が出てこない。薬の規制緩和だ
け。これは今、米で問題になっている問題だ。処方箋なしでアスピリンを
ネットで買える。ドラッグも買える。
坂中 スケールの小さな話。人口が4000万人も減れば、電力消費量も激減
し、原発もいらなくなるかも知れない。
大脇 私立大学は、危機。教育をどうするのか。総合的ビジョンを出さないといけない。
大脇 キーパーソンは坂根正宏氏ですか?
進藤 坂根氏ではない。佐々木氏が中心。オーガナイズが得意。小選挙区を立ち上げた。
進藤 尊皇攘夷か開国か。尊皇攘夷とは日米同盟。開国は何か、アジアからの
人材を入れないとダメ。第3の開国。(注:5)
大脇 シンクタンク機能が重要。一時鳥取へUターンした折、日本海新聞に連
載した。その中の1つ、「鳥取とシンクタンク」で長期展望性、国際性、
総合性を提言した。これは、歴史観、世界観、人生観の裏付け、一言で言
えば思想(哲学)を持つということを意味している。歴代総理の顧問役で
あった安岡正篤師の著書で偶然「長期的・多面的・根本的」という言葉に
目が留まった。さすがは安岡先生、物事の本質をつかむ要諦をご存じだと
感心し、自分の物差しに自信も得た。人生観とはその本質は、人生にとっ
て何が一番大切であるか、価値観の問題であり、総合性も何のための総合
なのか、価値観があっての総合性である。
坂中 小手先の改正ではダメ、日本の興亡をかけた歴史的転換が必要。
進藤 日本は、3分の2はアジアで稼いでいる。
坂中 人口動態は生まれてくる人と、死ぬ人と、移民の3要素で決まる。人口
崩壊は日本の崩壊だ。この提言は人口崩壊の恐ろしさを視野にいれていな
い。移民を入れたくないのだろう。
進藤 ガードを固めている。 シンクタンク、全方位は無理、やるんだったら
シングリッシュ。それもこの問題をやる。立ち上げたら10年間もたせる。
アジア地域統合だ。ネットワーク分業。補佐する形で、アジア国際学会。
アジア連合大学、シンクタンクを入れる。金も入って、情報発信もできる。
アジアのリーダーを排出できる、留学生として来ていた学生が、インドネ
シア大使、韓国大使になっている。
大脇 東アジア連合大学院構想、単位を共有。早稲田大学が全国紙全面広告で
唱っていた。日本もようやくEUの連合大学に習いつつあるようだ。
進藤 その東アジア連合大学院はダメになった。 定年退職し、60、70に
なっても素晴らしい頭脳をもった教授が活かされていない。その仕組みが
東アジア連合大学院構想だった。
久山 スイスのダボス会議を契機として生まれた「ワン・ヤング・ワールド
(OYW)」という国際組織がある。目的は現世代のリーダー(例えばアナン
前国連事務総長)の協力も得ながら次世代リーダーの育成。
進藤 TPPの7割、8割は日米。マレーシアのマハティール元首相が大反対。
難産か流産だと言っていた。今、言い方を変えてきた。10年単位とか2
0年単位の問題。
進藤 結局は攘夷論者の議論。基軸は日米同盟。私は反米じゃない。谷内氏は、
日米関係は騎士と馬の関係だという。米が騎士で日本は馬。ただ、騎士
言う通りに馬は動かない。米とイスラエルもそうだ。黒船、今は唐舟(赤
舟)で開国拒否。どう共生していくか。
進藤 ASEAN+3+3。
坂中 鳩山政権でアジア共同体論を打ち上げたり、小沢幹事長が訪中したりし
て、米は危機感を覚えのだろう。
大脇 文明の衝突。米、「自由、民主主義と人権」を軍事力・経済力で正義の
押し売り。 欧米文化の本質(特に米国)は存在とは、個物、個人主義で
あり、日・韓・中は、存在とは関係性だ。人間は「人間(ジンカン)と書
くように家族主義である。東洋伝統文明は生命原則に載った社会、西欧の
個人主義は生命のパイプを切断した切り花文明、個の寄せ集めである。
存在の実相は個物であると当時に連体(全体)。個と連体(全体)は存在
様相の二側面。両者の融合がこれからの時代の生き方である。
進藤 岡倉天心、「日本は世界の美術館」、ありとあらゆるものが集まって世
界に発信。21世紀の岡倉天心、「日本はアジアの博物館」
大脇 米、スタバックスとマクドナルドの押し売り。
『感動的日本の力』(馬渕睦夫著 )
坂中 中国は世界のモデル国にはなれない。
進藤 アメフト、アメリカ外交そのもの。だましのゲーム。作戦会議、重武装
ゲーム、ぶつかる。さらにハーフタイムごとにチアガールのソフトパワー。
小松 日本は相撲、裸一本、塩をまく。不正義はしない。 相撲は興行、見世
物だ。勝負ではない。江戸時代、喧嘩しないため。 米はアメリカ市民の
ためにある。だから当然のこと。
小松 天略(原理)、 政略(原則:ある前提のなかで)、 戦略(現実)、
戦術(現場)、戦闘(現物)
スマートフォンが出てきたことで天略が使える時代。人類史の中で初め
て。出雲は文字を持たなかった。なぜ、秘書を置くのか。脳からでたヒラ
メキを、文字に書いたらだめ。そもそもスピードが違う。だから秘書に書
き取らせる。アクセルとブレーキを同時に踏んではだめ。(注6:小松氏の
黒板を使っての長時間の説明はカットされている。それを補う意味でリンク
の講演録・資料を参照されたい)
現在は自分を閉じ込める文化。だから分業。意義が意味になり、目的に
なる。目的(文字)、目標(絵にする数字、いつまでに予算、PDサイクル、
プラン、行動、漫画、具現化する手段)。教養、ユーモアが重要。
成功の反対、失敗というが、「失敗は成功のもと」ともいう。
進藤 日本のロケット開発:「上がらないロケット」調査するとチームの2割
が頑張っているだけだった。2割が足を引っ張る。6割が足を引っ張る2
割につく。それで予算3分の1、人員も3分の1に減らした。それでよう
やくロケットが上がった。
待つことが難しい。待つというのは逃げるのと違う。 自分の金と自分
の時間でやることが肝要。補助金は邪魔、人の金をあてにすると、ろくな
ことがない。
日本、韓国、北朝鮮の国力が並んでいる。人間力というのは、他人の判
断におよぼす影響力をいう。 核大国は3国、ロシア、中国、米国。
小松 日本が世界の問題を解決する。米のアジア研究は昔、日本が主だったが、
再び日本研究が出てきはじめている。仏教研究やアニメ研究。
小松 安倍、よくやっている。宗教が力を失ってきている。島根県が誘致した
原発、本来、石見に作ろうとした。寄り添っていくしかない。限りなく安
全に寄り添っていく。文化、技術の問題ではない。終戦、バージョンが高
い。敗戦とは言わないで、言葉によるごまかしかもしれないが、どう使う
かが問題。世界の戦争を終りにする。それだと人類史的価値がある。バー
ジョンを上げる必要がある。 文責(大脇・池永)
注4:「2030日本再生の6大シナリオ」に対するコメント(久山純弘)
1)小松社長世界の平和事業家として殿堂(平和宮:ハーグ)入り
2)人間自然科学研究所の活動紹介
注7:その他、今回寄せられた参考意見、論文