東京大学・上智大学大学院を卒業後、経済企画庁、UNDP(国連 開発計画)等を経て、1975―1984年外交官として日本政府国連 代表部、その間、国連行財政諮問委員会メンバー(1979-83年), 国連総会第5委員会議長(1983年)を兼任、1984―1993年国連 事務次長補(国連ハビタット事務次長)、1994年JICA,1995― 2004年,JIU(国連システム行政監視機構)委員(委員長職も含む)。 2005年、長年の国連諸活動の貢献により、外務大臣表彰状受賞。 現在:、日本国際連合協会理事 前、国連大学客員教授 |
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久山 純弘 |
久山 純弘
1. 総括的コメント
(1) 現在わが国が緊急に必要としている日本の長期ビジョンに関して、日本
アカデミアがイニシャテイブをとっていることをまず高く評価したい。
(2) 6つの問題に関わる個別の追加的コメントは以下2の通りであるが、提起された
問題自体は概ね適切なものであり、とりわけ国際的視野に立脚したビジョン構築の
必要性にはじまり、対外発信、人口減少、中核的人材(リーダー)等の問題提起は
極めて重要である。
(3) 但し、日本の将来像を考えるに当って若干見落とされている問題もある。例えば
エネルギー問題(原発…)、戦後秩序・ノームに関わる問題(日本国憲法、民主的
政治体制のあるべき姿、その他…)等も議論の対象とすべきであろう。
2. 個別の追加的コメント
(1)今年が「第一次世界大戦」(p.169)の勃発後百年の節目に当たることも
あり、我々として同大戦の現代的意味合い等につき考えることも必要かも知れな
い(現在日本は尖閣諸島問題等をめぐり近隣国と緊張関係にあるが、第一次世界
大戦もいわば偶発的に発生したと云われている)。
(2)「アベノミクス第3の矢:成長戦略」(p.170)に関して、自然エネルギーの
開発促進という国家的にみても極めて重要な潜在的成長戦略に対する言
及が欠如している(東日本大震災からの復興との関わりでも東北を自然エネルギー
開発の一大基地とするとの選択肢もあり得よう)。
(3)「デモクラシイ」(p.171)に関する記述は弱い。
国民は単に選挙の際の「有権者」であるだけでなく、主権者であることの
再認識が重要。即ち、選挙(権利の行使)をすれば終わりということではなく、
主権者として、選ばれた政治家が期待通りの仕事をやっているか監視・フォロー
するほか、極力政策策定等にも直接・間接に関っていく義務があると云えるので
はないか。この様な状況をつくるには、「個々人が変わる必要がある」(p.175)
との記述に同感。
(4)「対外発信の抜本改革」(p.175)に関し、発信力については単に体制の
強化等にとどまらず、発信の内容自体が問題。例えば、少なくとも中・長期的政
策目標として、脱原発を含め、核に依存しない世界を目指すことを力強く詠いう
たい、その様な世界の構築のために世界各国と協力したいといった内容のメッセー
ジを発信することが出来るならば、平和国家としての日本の国際的地位は一段と
高まるであろう。
(5)「人口減少」(p.176)に関しては、「多民族共同体」(人類共同体」(坂中氏コメント)
といった考え方をベースに移民政策を促進させることに異論はないが、それと同時に、
わが国としては人口減という現実を踏まえた諸施策、生活習慣の見直し等も必要である。
(6)「政治改革」(p.179)に関しては、単に国会改革といった中央レベルで
の問題だけではなく、地方レベルの改革も必要。
(7)「人材育成」(p.179)に関しては、とりわけリーダーの養成が重要。
因みに、スイスのダボス会議を契機として4,5年前に生まれた国際組織として
One Young World (OYW) というものがあるが、これは経験・知見等豊かな
シニア(例えば国連のアナン前事務総長等)を含む現世代のリーダーの協力等も
得ながら、次世代の人材(リーダー)を育成することを目的として活発に活動し
ているもので、OYW の昨年10月のサミットには全世界190ケ国から1200 人以上、
日本からも約20 人の極めて優秀な若者が参加している。