歴史認識や領土問題で周辺国と対立、混迷する日本の進むべき道はどこに? 元早稲田大学総長が「平和」「アジア」をキーワードに、この国のリーダー と国民に訴える。 日本の進路 アジアの将来 「未来からのシナリオ」 著者: 西原春夫 講談社 2006年10月 |
目次
-----------------------------------------------------------------------------
第1章 21世紀の世界とアジア予測――「東アジア共同体」はなぜ実現できるのか?
第2章 グローバリズムとナショナリズムの相克と調和点
第3章 アジアの中の日本――過去・現在・未来
第4章 積極型平和貢献国家へ――「消極型平和理念」からの進化を!
第5章 法と道徳の二元主義をめざせ――日中韓をつなぐもの
第6章 今なすべきこと――「未来からのシナリオ」という視点で
---------------------
21世紀的国家観の新提言!!
筑紫哲也氏激賞!
北朝鮮の「核」など、緊張と不安が高まるアジアのなかで日本はどう進むべきか重大な岐路
に立たされている。だが、あるべき未来から、逆算して、現在を照射して見れば、進むべき
路は明確だ――と豊富な学殖と卓抜した着想を基にして本書は説く。この「賢者の予言」を
“21世紀のテキスト”としてなるだけ多くの人に読んでもらいたい。――(筑紫哲也)
平成19年1月 第2260号(1月24日)
■新刊紹介
このたび、西原春夫氏(元早稲田大学総長)が、「未来からのシナリオ」を副題として、
近現代の歴史の深層を抉り、正しい歴史認識に立って「覇道」でなくアジアの「王道文化」
に根ざした「積極型平和貢献国家」を目指すべきことを提言した、まさに私たち日本人にとっ
て基本的な歴史認識書であり、今後への基本テキストともなるべき書を刊行した。
構成は、二十一世紀の世界とアジア予測から始まり、グローバリズムとナショナリズム、
アジアの中の日本、積極型平和貢献国家へ、道徳、儒教、そして平和、今なすべきこと、の
六章から成り、極めて豊富な学殖と鋭い分析、戦中戦後を通じて七〇数年の実体験とグロー
バルな活躍等に基づく卓越した着想等によって、歴史の深層・真意を掘り起こし、その深い
歴史認識に則った現在・未来に向けての提言が展開されている。
明治以後の日本が、十九世紀的国家観に基づく欧米列強の植民地主義強行的国際環境の中で、
新たに西洋型の考え方を導入し、後進者としてやむにやまれぬ立場から「追いつけ、追い越
せ」の国家目標に至り、歴史的経過も歴史教育もある種のフィルターを通して展開されるこ
とになり、真意は明かされないまま、遂に取り返しのつかない世界大戦に突入、そして敗戦
・被占領・自主権回復・経済成長と経てきたが、この間にも国際的立場もあってか、またも
別のフィルターが掛けられて真意不明の経過が展開されてきた観があるが、そこに光を当て
整理分析して正しく認識した上で、「二十一世紀の後半には、アジアを含め世界中どこでも
国境が低くなり、それにつれて地域的な超国家組織が段階的に形成されて利害対立の調整役
を演ずるようになる」ことを予見し、その中で日本が何を為すべきかを説き、改めてアジア
の儒教精神に則った王道理念をベースとした、積極型平和貢献国家形成の必要性が提言され
ている。
名言:
「消極型平和国家は、『・・しない』ことを基礎におく構造上、若者が参加しにくい社会で
もある。(略)消極型平和国家制度を維持したり発展させたり変更したりできるのは、権力を
もつ"大人"に限られる。著者は法学者であり元早稲田大学総長。21世紀的国家観にもとづき、
日本とアジアがどんな距離を持つべきかを示す一冊だ。
★消極型平和国家と積極型平和国家
憲法9条に代表されるように、「~しない」といった考えにより平和を消極的に日本は求
めてきた。 ODA, NPO/NGOを通じて積極的に平和を主導(..続く)それが若者と国との距離を
さらに遠くさせ、彼らをよりいっそう苛立たせていると思う」p179
国際人になるための第一歩 Date:2007-07-15
世界の勢力バランスが変化していく中で、日本はこれからどうあるべきか?
著者は「そもそも世界は今後どう変化していくのか」を明示した上で、どの
ような信条のもとに日本の外交があるべきかを論じています。文章は簡潔、
明快なので読みやすかったです。
エピローグで紹介されている、著者が北京大学で行ったスピーチには感銘を受けました。
本書は基本的に国家としての日本を論じていますが、このあいさつを読んで個人として
日本を背負っていくとはこういうことか、こうも身近かなことなのかと思いました。
「~しません」という平和貢献ではなく、「~します」という積極的な平和貢献を
するべきだという点では共感しました。 ただし日本古来の儒教的思想を取り入れるべきだと
いう著者の意見は少し非現実的な印象を受けました。儒教であれ神道であれ仏教であれ、今
の若い世代にはなじまない思想であると思うからです。というわけで、この点に関して違和
感があった。
★消極型平和国家と積極型平和国家
憲法9条に代表されるように、「~しない」といった考えにより平和を消極的に日本は求
めてきた。 ODA, NPO/NGOを通じて積極的に平和を主導すべきだと著者は示す。
★法と道徳の二元主義
また法秩序に基づいた主張に止めず、道徳的価値観をくわえた二元的秩序を検討すべきだ
と考える。とりわけ日中の根元にある儒教思想を現代版にアレンジできると考える。
アジアとの関係を考える上でも、今につながるコンセプトが必要であろう。本書の主張も
含めて、考えられる方向性を多数持っておきたい。