松元 洋 氏
紛争現場の体験と平和の諸問題
1.現場の経験
ヴェトナム(11年)、インドシナ難民支援でタイ(1年)、ソマリア(3年)、
イラク(3年)、バルカン(15年)、30数年
世界の平和にとって、いかに人権の擁護、人間の安全保障、グッド・ガヴァナンス、
法の整備、社会福祉、教育、女性の地位の向上、隣国との友好、地域・世界の安定
が必要であるのか、そして、政府から民間団体そして個々人にいたるまでの協力が
不可欠であることを痛感してきました。
2.紛争の態様
1)世界的規模 東西対立
2)複数国家をまきこんだ地域紛争:イスラエルとパレスチナ,アラブ諸国
3)二国間の対立 インド対パキスタン
4)複数の国土にまたがる民族紛争 クルード民族とイラン、トルコ
5)一国内での民族紛争 セルビアとアルバニア民族
6)一国内における政府と反政府グループの抗争 スリランカ
7)テロの紛争
3.平和への和への道に横たわる上下前後左右多数の条件
大小いかなる紛争の解決にも、多くの場合、国連、政府、民間、個人の役割が不可欠
である。
3.1991年の湾岸戦争の背景と国連の役割
イラク国連人道支援調整官としての仕事の内容
1)戦争被害者、困窮者、クルード難民への援助活動
2)1000人の国連ガードと国際機関、NGO職員の安全対策
4.旧ユーゴの民族紛争とNGOの民生向上と紛争予防の役割
1)コソボでのセルビア系とアルバニア系の小学校の修復と紛争突発の被害
2)セルビアでの民族融和をめざした生徒の街の清掃とワークショプ
5.平和への日本の役割
国連へのヴィジョン、人材、資金をもっての具体的貢献
NGOの役割
----------------------------------------------------------------------------------
個人のそれぞれの立場における貢献
限定された時間、エネルギー、資金ももってなしうる人類平和への貢献は決して幅の
せいまいものではなく、それはそれぞれの活動のレベルと影響力の範囲からみて次の
三層に渡るものと思う。
1 政治的レベルの高いもの、そのための具体策:
国内団体との横の連携:有力なNPOの指導者、幹部を招いての協議会の設置 海
外の有力な団体との定期的情報・意見交換 目標を設定した上での世界、国内の主要
NPOを招いての国際会議
2 地域レベルの具体策:
アジア、アフリカ、中東の地域の団体(例えばアフリカ連合)との連携
地域の団体との意見交換、協力をとうして具体案を模索する
3 国レベルでの貢献:
現地の日本大使館また在京の各国大使館との意見交換による具体案の策定
選挙管理への参加、国内と現地における各国の学生同士の討論の場を設ける
現地に赴き、或いは平和構築活動をしている邦人また各国NGOとの共同事業
差し当たって、外務省の平和推進担当の部局の責任者と接触し、他のNGO、例えば
日本紛争予防センターなどとも連携して平和活動のための資金集めのPR、具体策を
検討してみてはいかがでしょうか。
また、既に現地で平和構築に従事している団体、例えば私どもの紛争予防センターや
日本救援行動センテーの活動の状況を視察し、また学生・青年の団体の派遣、現地で
の学生・青年との交流の推進そしてかかる企画に韓中の関係者も参加させてもいかが
でしょうか
外務省の民間援助連携室やJICAに対し具体的な草の根の平和構築の計画を提出し、
資金の申請を行い、具体案の実施に乗り出してみてはいかがでしょうか。
また横の連携を図るため都庁に対し、NGOが共同で使用する無料の施設の開放を要
請してはいかがでしょうか。結論としてなし得ることは多数、多様あると存じます。
=======================================================================================
1 短期的対策
1−1 日米同盟の戦術的、戦略的重要性を踏まえつつ米国内の新しい核廃絶の動きを全面
的に支持する討論・集会を展開して国民に平和への希望と同時に現実的取り組みの重
要性を強調したい。
1−2 グロバリゼーシオンの下で進みつつある米中の接近、中ロ間の水面下の対立を見据
えて、日米中韓の戦略的連携を深める方向に、政治、外交、軍事、学術、文化、スポー
ツ、あらゆる分野の交流を一層もりあげ信頼関係の醸成につとめる。
1−3 今後とも6者協議を継続し、国際的検証のいきとどいた北の非核化、同時に拉致問
題の解決を忍耐強く求め、脅しにのることなく、冷静に各種のプレッシャを加えあせ
ることなく体制の変化を待つ。
1−4 IAEAのアプローチと査察を支持しつつ、時におうじて北の非核化実現のための
安保理決議を共同提案する。 困窮している北の国民にたいする同情を喚起し、有効
な人道支援の模索し実行する。
2 中期的対策
2−1 官民産学一体となって、米国のみならず国際社会に対し日本が平和憲法、戦争放棄、
核三原則をモットーとするユニークアな国であることを常時PRし、広島、長崎での
諸行事を盛り上げて、われわれの核廃絶への念願を発信する。
2−2 核保有国が増える可能性のあるなかで、日本が万一外国から核と通常兵器の攻撃に
さらされた場合、米国の核の拡大抑止力はどのように適用されるのか、米国民は自国
が核攻撃を受けるかもしれない危険をおかしてまでも日本を守ってくれるのか、ワシ
ントンの真意をただし、日本防衛の対策、東アジアの安全保障、朝鮮半島の非核化を
各国とオープンに議論する。
2−3 米国の新しい軍事戦略の展開にともない、米軍の日本国内駐留の意味はうすれつつ
ある。他方、各種の米兵の不祥事件に対して国民の批判がたかまっていることは、日
米同盟にかげをさす恐れがある。したがって経費節減のためにも基地の数を減らすこ
ととし、そして地域協定に日本の主権尊重の原則を加味した修正を加える必要がある。
2−3 核兵器国でない日本は、核軍縮交渉には直接関与できないものの、CTBT,FM
CT,NPTを実効あらしめるためのすぐれた技術は有しており、この技術を活用し、
不拡散と平和利用確保をめざし、先頭をきって、資金、技術、人材を一組として貢献
する。
2−4 自衛隊の海外派遣には憲法上種々の制約があることを米国の政府と国民によく理解
してもらい、アフガニスタンでのテロ抑圧においても法の整備、行政支援、人道・開
発援助の分野で汗を流していくことを強調する。
2−4 若者の参加するNGOの数をふやし、またその機能を強化し、国内的、国際的に相
互の連携を促進し、個々にまた連携のもとで国連、地域の組織、問題の関係諸国と接
触、話し合い、紛争予防、平和構築、人道・開発支援、人権擁護、緊急援助、教育、
環境、あらゆる分野での活動を官民際学協力して推進する。
3 長期的対策
3−1 核廃絶、平和を議題とした会合を繰り返し、多文化、多民族の組織、宗教団体間の
交流を拡大し、国家間、民族間の相互理解を深める。
3−2 核兵器国中心の国連組織を21世紀の新しい国際環境と民主的な理念に沿うように改
革する。
3−3 民間団体を母体とした組織を第二の国連として設置して、国益の視点と人類生存視
点のバランスを図り、核軍縮、不拡散、平和利用の確保を図る。
以上
==========================================================================
2009年11月24日 松元洋
11月27日、鳩山政府は20010年度予算の無駄を洗い出す事業仕分けを終え、約1.7兆
円に達する種々の事業の廃止、削減、延期を決めた。この成果は当初予定の3兆円にはは
るかに達しなかったが、はじめての試みの結果としては、一応評価しうる。
予算をけずられた関係者からは仕分けに反対し事業の継続をもとめる声が噴出している。
特に注目されたものが、八っ百ダム建設、スパコン開発、スポーツ振興関する予算であっ
た。水不足への対策としてのダム、将来の基礎科学確保のためのスパコン開発、20012年
のロンドンオリンピックでのメダル獲得のためのスポーツ振興とそれぞれの予算の重要性
が主張された。
いかなる公共事業についてもそれぞれの目的にはそれなりの背景があり、仕分け人はこれ
をひていすることは困難である。要は予算の費用対効果である。各分野の事情に詳しい人
たちによれば、それらの予算の内には、本来の目的実現に必要な経費に上乗した人件費、
贅沢な施設費、機材費も多々数ふくまれており、綿密な検証によって不要な部分を切捨て
なければならない。同時に政府には短期、中期、長期の観点から事業の重要性を比較検討
して優先順位を定める責任がある。
予算削減に反対する関係者からの批判は多々あるとしても従来各省庁が族議員と組んで国
民の目の届かないところで決められていた予算編成が公開され意義は大きく、それは極端
にいえば革命的な改革であり、我が国の民主政治を一歩前進させたと言い得る。
今回の仕分け作業には国民の意向を反映させるべく、政府によって選らばれた学識経験
者が多数参加した。この人選につき、一部のメデイアはもっと幅広く国民の声を注入する
ような民間人の採用があってよいのでないかと批判した。どんな問題にも人選は容易でな
いが、今後の仕分けについては出来るだけ政府や特定の業界とのしがらみのない自由な立
場で発言できる若手の専門家を、いわゆる学識経験者に加えて採用してもらいたいと思う。
グローバリゼイシヨン、地球の温暖化、疫病の蔓延、核の拡散等の高まる危険を前にして
将来を担う責務は重く、仕分けにも若手の斬新が切り込みが不可欠と思う。
民主党は、自民党による長年の業界と不明朗な癒着もある道路、ダムのインフラの建設
事業を批判して‘コンクリートから人‘ であるとの方針を打ち出し、それは仕分けの作
業にも伺われた。背景には過疎地にいけばインフラ整備の不備は残されているとしても主
要な施設は整ってという事情があって‘人‘の重視が出てきた。ハードからソフトへの基
本方針は、国内事業の予算お仕分けのみならず、国際的事業についても適用されるべきで
ある。
例えば日本の食料援助についてみると、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)、WF
P(世界食料計画)、 UNISEF(国連児童基金)、FAO(食料農業機構)と多数
の国際機関に資金を提供しており、同一の目的の援助活動にいくつもの国際機関の関与に
よって二重三重の人件費と管援助理費が支払われている。今回は時間切れであったが、次
回からは国際機関への拠出に関しても 厳しい仕切りを行うと同時に国際機関が行いた
いとする計画に対していわれるままに資金を提供するのではなく、日本人が中心となって
拠出金を自ら管理、使用して援助活動を実施しうるようにすべきだ。
二つ問題が浮上した。一つは、仕分けは長期的ヴィジョンを踏まえてなされなければなら
ないという主張である。スパコンの仕分けにつき、ノーベル科学の受賞者が勢ぞろいして、
日本の将来の科学・技術立国のヴィジョンを掲げて、スパコンの予算削減に反対した。同
様にJICAも国際的協力・支援の長期的意義を確保すべくODA(政府開発支援)の予
算削減に反対した。それぞれの事業に関わる人たちは熱心であればあるほどの目的達成の
ために予算の削減に反対するのは当然である。同時に税金が使用されている政府事業は必
ず