第52回 未来構想フォーラム

「日本の未来構想を探る
  
─ 教育をキーワードとして ─ 」

日本を取り巻く国際情勢の厳しい折、新しい観点から未来構想を描くことが重要です。
長年、教育に携わってこられた鈴木博雄氏をお迎えし、「教育問題の何が問題なのか、」
ご発題を頂きます。世界の中の日本として役割が問われる中、「まずは国家像を糾し、
教育で何をなしうるか考えるべき」との経営現場からの提言を小松昭夫氏にいただいた後、
教育を糸口に日本の活路を探りたいと存じます。
今回の企画内容を踏まえて、9月17日にはさらに踏み込んだ具体的提言が新内閣へ出来れば
と考えています。

  平成18年8月23日 
           NPO法人 未来構想戦略フォーラム 共同代表 大脇 準一郎
           (財)人間・自然・科学研究所 理事長    小松 昭夫

               

日時:8月30日(水)午後1時半~4時半
場所:芝パークホテル


次 第:                         総合司会:大脇準一郎
発題1;「
教育改革の核心─ 教育はどこに問題があるか?」鈴木 博雄 氏 
     
教師、教育委員会、PTA、戦後民主義教育? 
     


発題2;「
世界の中の日本の役割―あるべき国家像と教育改革―」
                  小松 昭夫 氏

     日本から世界ではなく世界から日本を見る;視点のコペルニカス的
     転換が急務!
     あるべき国家像を確立してこそ教育改革が出来る!

フリーディスカッション「教育で如何に日本の活路を拓くか?」 司会:新谷文夫

*ブロードバンドの紹介 IGTVテクノロジー、         伊澤 清吏 社長
        未来構想チェンネル他

共催;未来構想戦略フォーラム/人間自然科学研究所

         討 議 者 

1、鈴木博雄  筑波大学名誉教授 日本教育史専攻
2、一色宏   未来草庵 庵主;ロゴデザイナー
3、中川十郎  前東京経済大学教授 マーケティング
4、新谷文夫  未来構想戦略フォーラム共同代表、前日本総研 所長
5、大脇準一郎 同上  国際企業文化研究所所長
6、小松昭夫  (財)人間自然科学研究所 理事長 小松電機産業㈱ 社長

         オブザーバー: 
1、 小松社長 令夫人
2、 尾脇千恵子 ハリコフ芸術アカデミー大学院生
3、 奥田東子  和服コレクター、セラピスト 
4、 湧井昌宏  ワクイプロダクション(有)代表 
5、 伊澤清吏  iGTvテクノロジー㈱代表取締役

6、
堀江研次 (財)人間自然科学研究所研究員
7、
尹     (財)人間自然科学研究所研究員 他、若干名  


    

 日本の未来構想を探る 教育を糸口としてメモ  
      2006年8月30日  東京・芝パークホテル


共催 NPO法人未来構想戦略フォーラム・財団法人人間自然科学研究所


             パ ネ ラ ー

 鈴木 博雄(すずき・ひろお) 筑波大学名誉教授
1929年大阪府生まれ。東京教育大学大学院博士課程修了。横浜国立大学、東京教育大学
講師等を経て、筑波大学教授に就任。この間、筑波大学付属小学校校長も務めた。現在、
常磐大学教授、筑波大学名誉教授。「日本躾の会」研究委員長も務める。専攻は日本教
育史。教育学博士。著書は『原点近代教育史』『母親は何ができるか』『父親は息子に
何を伝えられるか』他多数。

 一色 宏(いっしき・ひろし) デザイナー

 1937年愛媛県松山市生まれ。人間がなぜ、真、善、美、利を求めるのかを追求し、デ
ザインは単なる装飾や意匠にとどまらず、生活文化としての役割や、企業文化の創造の
ためにHuman first Heart first で万象の共感を呼ぶデザインを探求している。特に、
コーポレートシンボルを中心に、生命的価値・人類的価値・社会的価値に高めてCIデ
ザインを展開する。

中川 十郎(なかがわ・じゅうろう) 元東京経済大学経営学部教授
日本ビジネスインテリジェンス協会の会長としても知られている。1935年 鹿児島県生
まれ 1959年 東京外国語大学外国語学部イタリア学科国際関係専修課程卒業 。卒業後
はニチメン(現双日)勤務を経て愛知学院大学商学部教授に就任。1998年 東京経済大
学教授に就任。2006年 東京経済大学退任。

新谷文夫(しんたに・ふみお) 株式会社インタークロッシング 代表取締役
東京大学工学部卒。小松製作所を経て、米国カーネギーメロン大学大学院修了。 日本
総合研究所理事、オープンタイドジャパン(サムスンSDSジャパン)CEOを経て、2003年
11月より現職。著書「図解IT経営」、「図解ITバリアフリーのすべて」、「図解デ
ビットカード」、「図解eマーケティングーインターネットを活かした新しいマーケティ
ング手法が一目で分かる!」など。

大脇準一郎(おおわき・じゅんいちろう) 「日本の未来構想を大胆に描き壮大な
夢に挑戦しよう!」と叫び続ける「NPO未来構想戦略フォーラム」代表
 
NPOや市民団体と連携した市民国連運動を推進。NY州立大学卒,早大,ハワイ大に学ぶ。
(財)国際科学振興財団主任研究員,IAUP(世界大学総長会義)日本事務局長。ナショナル・
ゴール/グローバルゴール研究プロジェクト事務局長。日本学際会議,21世紀ビジョンの会,
新しい文明を語る会,国際教育研究所等の学術団体設立,育成。国際学術会議を20回以上
企画運営。ワシントン・インスティテュートュートアドバイサー,在米日本人協会顧問,
インターネット・ビジネス研究所代表,Patent University大学院創設委員,講師カリブ
地域、南米地域NGOアドバイサーを歴任。

小松 昭夫(こまつ・あきお)(財)人間自然科学研究所/小松電機産業株式会社社長
 1971年小松電機産業を創業、NTTドコモと提携しWEBを使った警報システムを備え安価
・安全な下水道オペレーションシステム「水神」を開発。工場管理に革命を起こしたシー
トシャッターを発明、ニュービジネス大賞を受賞した。1994年に(財)人間自然科学研
究所を設立、中国の南京虐殺記念館、韓国の独立記念館で日本人として唯一公式に訪問
・謝罪、05年には真珠湾攻撃記念日にハワイのアリゾナ・メモリアルで日本人として
始めて公式献花、平和への提言と行動を続ける。




大脇

鈴木先生は東京教育大学ご出身で、日本教育史のご専門です。「親や教師は若者にどう
教えるのか」「若者の生き方」に焦点を当てて長年先生は研究し、教育なさっています。
特に筑波大学の創設に当たってはマスタープランの委員として、大きな役割を果たされ
ました。今日は教育改革ということで先生にお話をいただくことになっております。

鈴木
今から20年から30年前の大学紛争の時代、戦後教育の最後の破綻がそうなったんだとい
うことを踏まえて、いろんなことを言ってきたのですが、今般のような結果になったと
いうことは、“我が力足らざりし”ということを今、つくづくと感じています。今、ど
うやれば有効な教育改革が出来るのか。みなさん教育が大事で、教育改革が必要なこと
は知っている。だけど具体的にどういう順序でいけば本当の改革ができるのか。どうも
そこになるとぼけてしまう。皆さんが「教育改革が必要だ」というのですけれども、一
番重要なのは「どんな人間をつくるのか」ということ。「今の日本がどんな人間を要求
しているのか。世界の中で日本の国民はどうあるべきなのか。30年前は共通認識があっ
たわけです。しかし今はそれも無くなってしまっている。だからそこから本当の出直し
をしなければならない。」というのが私の本当の気持ちです。

今、自分の人生と重ね合わせた日本の歴史を書いているのですけれど、昭和は戦争に行っ
たということで本当にたくさんの本が出ているのです。しかし本当の分岐点は大正10年
ごろ。なぜ大正10年かと申しますと、大正9年に原敬(首相)が、大正11年に山県有朋
が死んでいるのです。原敬はもっと昭和でも力を発揮できたのでしょうけれども、死ん
でしまった。その次に関東大震災が起こるわけです。そこらあたりで、明治はすべてご
破算になってしまったのです。

明治と、大正、昭和の一番大きな違いは、人間が違う。教育が普及し、組織の中に組み
込まれていく人間が増えた。しかし、組織を改革し、引っ張っていく人間は出て来なかっ
た。対応できれば出世が出来たのです。そこから学歴主義が出てきた。明治の人間はそ
うではなかった。自分たちで組織を作った。昭和5年、浜口雄幸がテロで死んでいる。
骨太な政治家はみんな死んでしまった。その次の政治家というのは、やはり腰が引けて
しまう。こっちが良い、あっちへ行ったら危ないんだというのは分かっているんですよ。
しかしちょっと脅されると妥協する。妥協に妥協を重ねると、もう後戻りできなくなっ
てしまう。
三国同盟までは、戻れなかったですよね。これが日本の仕組みで、日本が直すとすれば、
テロも恐れないで「俺は死ぬつもりでやるぞ」と言うと、おそらく皆、付いて来る。昭
和の始めから、「俺は、テロが怖いから」。そういう者の連続で、結局あそこまできて
しまった。そういう世相はそんなに長いことは続かないで、どこかで爆発するものです。
もしくは「俺について来い」という人が出てきてその人に付いて行くか。そこらあたり
が一つの山で分かりませんけれども、私の、勘から言うと、ここ5年から10年の中で日
本の方向性が決ってしまうと、ちょっと後戻りできないようなところに差し掛かりつつ
あるなという感じがしております。

そういう意味で言うと本当は次の日本を担う政治家は大変だと思う。しかし、なかなか
難しいのではないか。蛮勇の士、田中角栄クラスの人が出れば別ですが、そこまで日本
の国が病にかかっている。その責任は私たちにある。私は今77歳になるが、われわれが
日本を堕落させたのだと思っています。一生懸命だめだぞと声を大にしてきたが、言論
というのは力ないものだと思っています。

自分の出来る範囲で、次の日本を背負う若者たちに何か出来ないかということをやって
いる。小さなサークルですけれど、順々にそういうものを立ち上げて。大げさなことは
出来そうにないと思っている。しかし、「日本のためにやろう」という人を結集できれ
ば。数ではない。これは人の質の問題。昨日も実はある有志の会合で、申し上げたのは、
松下政経塾ではないが、本当の人材を育成する塾、企業の次の担い手、大学であれば期
待される研究者、素晴らしい人材が現れれば。突き出たら、みんな付いて行く。突き出
るまではみんなで押し上げてあげなければいけないが。

今になって松下政経塾は、やはり松下幸之助さん偉いなあと思っています。もう一辺、
松下さんとは違う意味で、少数精鋭の人材を育成していくこと。具体的にはそういうこ
とをあちこちでやろうと思っています。

日本だけの問題ではなくて今の時代は、かなり世界的な視野を持った人材を必要として
います。世界的と言って脚は日本についていなければならない。要するにアジア問題と
いうのは中国だ。欧米人が言うのは、アジア問題というのはIT’S  CHINAだと。朝鮮
も大変な問題ですが、中国というのは陸的にくっついている。日本はIT’S  CHINAを
どうするかという問題と思っています。アメリカは、要するに民主主義というのは絶え
ず揺れているのです。日本はそのアメリカの揺れにくっついていると、アメリカが揺れ
ると付いて行けない。今の日本は、ややくっ付き過ぎではないかと。その点ヨーロッパ
は良く知っている。日本よりははるかにアメリカと距離を置いている。日本の場合はちょっ
と問題がある。武器の無い国で、日本は何で国際的影響力を及ぼすかというと、やはり
技術の力、匠の力。技術と学問を基にした産業の力。アメリカと日本を比較すると、ア
メリカは大量生産で、たくさん作るから安く出来る。これを日本がいくら追いかけても
かなわない。その代わりアメリカは労働者の質は問わない。大量生産ですから。日本は
一人ひとりの労働者の質を考えたらアメリカに絶対負けない。アメリカの労働者に比べ
たらはるかに高い。日本の労働者の質の高さで競わなければならない。それがうまく行っ
たのが70年代のIT産業だったのですね。ある意味で言うとアメリカを追い抜いて世界最
大の債権国になりえたのは、IT産業というのが日本の労働者にぴったりと合っていたの
です。IT産業の次に何があるのか、やはりモノを開発していくしかない。日本は職人的
な細かさと執念深さ。このレベルの高さは中国はとても及びません。しかしそれが十分
に発揮できないような環境にしているのです。それがまた問題です。

もう一度人間そのものを奮い起こす。「これでやっていこうじゃないかと共通のコンセ
ンサス作りをする。マスコミに頼るのではなく、小さなグループであっちこっちで浸透
していく。そういうやり方が一番遅いようで、一番確かなやり方なんじゃないでしょう
か。

私は10年ほど前から親子キャンプというのをやっています。20家族、50人ぐらい。2泊
3日で長野の清里で私の小学校時代の寮がある。そこを借りて子供を自然に触れさせる
というのを最大の目的にやってきた。そこに来ると親子の関係がまるで変わっってしま
います。「うちのお母さんこんなところがあるのか」「うちの子供は集団の中にいると
こんな面があるのか」というような、家庭では見られない両方の発見がある。もう一つ
はよその家庭の親子関係を見ることで、「これは良い」と、自分の家庭の親子関係の参
考になる。学校では同学年のキャンプはやるけれど、違った学年と共同生活をするのは
なかなか無いこと。これを私は全国に訴えている。熊本、福岡、長野、名古屋、滋賀、
千葉、茨城、栃木でも。地方でいろいろですが、やるとみんな非常に喜んでいましたね。
結構な数になって生きがいを感じています。要は人づくりだと。それにはしっかりした
目標を立てて、みんなでやっていくことだ。

大脇
日頃、鈴木先生がおっしゃるには「現代の教育の核心は教員養成を忘れている。PTAに
野放図にさせていることだ。もっと問題なのは戦後受け売りの教育をしてきたことだ」
と。それで問題解決の方策の1つとして、身近にできるボランティア教育活動を紹介し
ていただきいただきました。また鈴木先生は、「日本が誇れるのは産業力ではないか」
とおっしゃったのですが、教育も含めて、日本文化が世界に貢献できるのではないかと
思います。ただ、この点、小松社長が指摘されるように、「日本文化が素晴らしい、素
晴らしい」と言うと、中国や韓国から必ず問題になる。この点どうしたら良いかと思っ
ていましたら、先日、山折哲雄先生にお伺することができました。山折先生は少し考え
て、「結局のところ小松社長のおっしゃる近代史としての視点も重要だし、近代史の数
百年ではなく、千年単位で観ると、われわれは中国から恩恵をうけている、中国への感
謝の想いを持って対処すべきだ」とご回答でした。

鈴木
奈良大和の仏像を見て廻っていると、ある仏像にとてもほれ込んで見ていまして、「こ
れこそ外国は真似は出来まい」と思っていましたら、10年ほど前、ソウルに行き、ばっ
たり同じものに出会ったのです。「まったく同じだと」。よく見ると向こうの方は700
年前に作っている。この違いは大きい。これには参りました。しかしよく見ると日本の
仏像は全体的な構造は同じでも繊細さがある。日本は、大陸文化に恩恵を受けていると
いうことには、本当だと思います。

小松
私は物事を考えるときには長期的、多面的、根源的に考える。しかし毎日生活していく
には短期的、部分的、表面的でないと生きていけない。それをいかにして論理的に整合
性を取るか。そのためにどうするかということで、知恵が問われる。人類が地球上に出
てきて、人類は依存で始まる。他の動物は自立から始まる。この依存から始まるという
のが人類の特徴だ。「他は自分のためにある」。それをいかにして持続させるかという
過程で、人類はヒト、それから人間に変わっていくわけです。人間というのは「ヒトの
アイダ」と書く。この「アイダ」がうまく取れないのを間抜けという。持続可能な自分
の生活条件をどうなっているかというのを直視して、そうするとエネルギー、食糧、そ
れが持続するためにはどうずるかというのが、あらゆることの前提になっています。衣
食足りて礼節を知るという言葉がありますが、衣食とエネルギーが無かったら、これは
もう、殺し合いになってしまう。そういうときに私は三つの視点からモノを考える。戦
争と平和、自然環境の中で生きている自然環境問題、もう一つは心身ともに健康でなけ
ればならない。いわゆる平和と、環境と、健康、この三つから。そうしますと環境問題
は、生命の誕生から考える。太陽があり、濃硫酸の海がある。そこにシアノバクテリア
(独立微生物)がある。ミネラルを吸って酸素を放出する。そこに従属バクテリアがで
て、酸素を吸って活動する。これが生命循環のスタートです。この視点から生命循環を
考えると、シアノバクテリアが大気をつくったということを考えると、環境問題という
のは十分に解決可能です。

もう一つは健康問題、化学物質がずいぶん体内に入っている。この化学物質は宇宙から
入ってきたものではない。地球上にあるものから得たもの。これもいかに体内から輩出
するか。逆に有害なものを有益にする。もう一つは対立の問題がある。人類はもともと
「他は自分のためにある」と、もともと対立する性質を持っている。性悪説というのが
あるけれども、対立する生命体だと。ですから対立からいかにして共生にもっていくか
というために、文化とか教育とか、教養がある。日本は三つの対立になっている。一つ
は国家間対立、ひとつは中央と地方に現れる地域間対立、もう一つが世代間対立、これ
が複合したときに民族は滅びる。これを解決する方法として人類は戦争という方法を持っ
ている。内部分裂を起こして誰が敵か分からなくなったときに戦争を起こして、たとえ
人口が半分になっても、三分の一になっても、もう一度、スタートが出来る。これを昔
の人は「負けるが勝ち」といった。大損害を出すことが分かっていても戦争を選んでい
る。戦争を放棄していないのは、この理由による。放棄したところは、民族はばらばら
になっている。再び国家というものをもちえない。

ところがありがたいことに人類は三つの核を持っている。一つは疑心暗鬼の核。この疑
心暗鬼の核に対して、処方箋を見出したのが実は宗教。これで国家を作ったのがローマ
帝国。これがキリスト教を国教にして作った。ローマ帝国が大繁栄したのが、微生物の
制御。これは下水道によって、いわゆる有害な微生物が繁殖する、伝染病によって崩壊
する、それを防ぐ方向を開発した。ところが片方でそれを兵器にするということが行わ
れた。それが第二次世界大戦で731部隊というのが現れた。これは貧者の核といわれ
ている。三つ目がお金持ち、大きな富、技術を用いたのが原爆。

この三つの核が、20世紀はコントロールされていた。21世紀はこれがコントロール不可
能になってきた。この三つの核の問題がコントロール不可能になってきた。心の問題が
各家庭でも、地域社会でも、国家間でもコントロール不可能になってきた。二つ目が微
生物、この危険性が出てきている。これの一番最初がオウム。三つ目が核の拡散。この
三つが重なっている。

李鵬(元)首相が十年前、「そう遠く無い将来、日本は消えてなくなるだろう」と言ってい
る。私はこのまま行けばそうなると思います。こうならないためにどういう方法がある
か、実はノアの箱舟というものがある。今年、アメリカではハイ・コンセプトという本
が発売された。ダニエル・ピンクという人が書いた。アメリカ150年の歴史で最初は、
農業の時代、次は工業の時代、次はコンセプトの時代。ビジネス書としてはほとんどの
書店でナンバーワンでした。

日本という国が、どういう役割を、人類の歴史の中で果たすか。果たすべきか。こうい
う視点で考えると、生命の歴史、人類の歴史、近代、この三つの時間の切り口で考える
と自ずから浮かび上がってくる。すなわち朝鮮半島、韓国、北朝鮮、そこに日本のどこ
かの地域。わたしは中海宍道湖圏、山陰だと思っていますけれども。朝鮮半島の対岸で
すね。この三カ国が力をあわせて、100年後からみて、恥をかかない、歴史の評価に耐
えうることを集中的にやる。この三カ国、北朝鮮、韓国、日本は核大国の影響をものす
ごく受ける。中国、ロシア、アメリカ、この三つの核大国が今、やろうと思っても出来
ないことがあります。それをこの三カ国が力をあわせて、日本が提案することによって
その流れを作る。それを私が構想しまして、しかし、韓国、中国から賛同を得なかった
らできない。ついこの間も、市民時代という雑誌で、四カ国語で、韓国から出してもらっ
た。これを読んでいただきますと、その辺のことが分かってきます。今の厳しい状態で、
日本人、おまけに島根県人を雑誌の表紙に使うということは、社会的生命が奪われる危
険性がある。著者は大統領とも直接話ができる人物です。これはどういうことかといい
ますと、自分も、今を生きる韓国人として、市民時代という有名な雑誌の編集長として、
この私の活動を載せないということは、逆に私は一人の人間として後悔することになる。
人間として、私は、社会的生命を失うかもしれないけれども、出さなければならない。
ここが私は、素晴らしいところではないか。ここの入り口。

やはり日本の国外に先ず。中国の孫文先生は日本に来られた。こういう状況になったと
きには国外に賛同者を得る。次に国内に。それが順序だと思う。東西の冷戦と日本は簡
単にいうけれども、アメリカは50年間やってきた。戦争中毒になっている。たいへんな
苦労をして今の社会の流れを作っている。このことにもっと日本は想いやりをいたさな
ければならない。と同時に東西冷戦の中でもっとも割を食ったのが中国であり、アフリ
カである。このことにもっと想いをいたさなければならない。そしてその一番大きな残
滓を抱えているのが北朝鮮。これは日本が救済しなければならない。

朝鮮半島が戦前、封建時代を経ずに、併合された。武の国が、文の国を併合するときに、
明成皇后が暗殺され、その次に王様が毒殺されたということがある。そして結果として
日本の植民地になった。もちろんロシアや日本と手を結ぼうということを李王朝がやろ
うとしたことに発端があるわけですが、だからと言って女王が寝ている部屋に入って暗
殺するということは言語道断です。そのときに朝鮮はロシアと手を組んで、朝鮮半島に
ロシアが来るというのは大変な恐怖になるが、だからと言って女王が寝ているところに
押し入って女王を殺すというのは許されることではない。

やはりそういうこともきちっと直視をしなければ、新しい時代は来ない。日本と韓国と
北朝鮮。日本全体としては無理。日本のあるチームと言っても良い。世界の紛争地帯が
あります。これが一つのモデルになる。それが必要ではないか。そのためにどういう人
材を必要とするかというのが、教育ということではないだろうか。

ドイツはヨーロッパの中で生き延びるためにはどうすればよいか。戦前は、ヨーロッパ
をドイツ化する政策を取った。戦後はドイツをヨーロッパ化する政策を取った。日本は
逆に、世界中に、中国には200箇所といわれていますが、オランダにも大きなものがあ
ります。怨念発電所を、これだけ歴史上作られた国はないんです。戦争記念館というの
は怨念発電所なんです。怨念発電所は国家を超え、民族を超え、どんどん出来ていく。
怨念発電所を逆に昇華する。この怨念発電所を使ったのが、実は宗教なんです。宗教は
怨念を昇華するというプロジェクト。この怨念こそが、持続可能な巨大エネルギー。そ
ういうものが作られたということは、逆に、日本の英知が問われる。世界恒久平和のた
めにこの怨念発電所をどのように使うかということが問われている。大脇一色さんは世
界的なロゴデザイナーで、文化に造詣が深く、それをまたビジネスに結び付けておられ
るわけですけれども、今、小松社長の話を聴いてどのようにお感じになられましたか。
一色本当に小松社長のやっておられることに敬意を表します。民間でこのように現実に
行動されていることに頭が下がります。政府レベルで何も出来ないという状況のときに、
大変なことをやっておられると思う。そこで信頼を勝ち得ていることがいかに大事なこ
とか。そういうことが日本を救うのかもしれません。文化、歴史をずっとみると、アメ
リカはイラクに侵攻しましたけれども、イラクには本当に素晴らしいものがたくさんあ
る。そういうものを尊重していたらああいうことは起きなかったと思う。戦争というの
は恐ろしいもので、文化を破壊する。お互いに称えあって、逆にその違いが素晴らしい
と言い合える社会。その点、日本は、シルクロードを経て、最後に韓国を経て日本に来
ている流れを見ると、日本はまさに美の溶鉱炉である。逆に日本はそれを世界に返さな
ければならない。日本の国の人たちは、何も無い奈良時代に渡来人の文化を本当に憧れ
たのだと思います。そして渡来人は、日本での活動で結実したのだと思います。ですか
ら同じようなものでも、日本に来たものは非常に洗練されて世界に類例の無いものになっ
ている。ということはここに何かがあると思う。縄文時代の歴史があって、疑いの心が
無い。争いはしないで調和していくという不思議なところがあって、自然という調和し
た理想があったように思います。

まず、急激に明治維新によって、ある意味のカルチャーショックですよね。問題は戦後
教育です。今、学校教育で、恐ろしいことが起きている。図画工作から音楽の時間が大
幅に減らされている。心豊かにする土壌が無くて知的教育ばかりさせられたら、感動も
何も無いんです。ものが面白くないんです。私、たまたま数日前に有楽町に地下鉄の通
路があって、いろんな子供たちの絵があるんですが、まあ子供たちって天才じゃないか
と思えるんです。素晴らしい絵がいっぱいあるんです。

鈴木
だいたい小学校の1、2年ぐらいが素晴らしいです。それがだんだん学校教育を受ける
とだめになってくる。

一色
そうです。天才だったのを凡才にしてしまうのです。このことのために感動の無い、喜
びの無い教育では何が起こるか。まったく恐ろしいことになる。感性教育が完全に抜か
れてしまった。

新渡戸稲造先生が第一高等学校の先生をやっていたときに、えらい生徒に人気だった。
昔の先生、また生徒もすごかったなと思う。一部読みますと、「僕は専門先生よりも顧
問先生」。「先生は理論の人ではなく常識の人であり、弁論の人ではなく行動の人であっ
た。先生は心の人であり、愛の人であった」。先生がいろんな問題があって第一高等学
校を辞めさせられる。このときの告別の演説では「教育とは精神である」と言っている。
そして、「諸君を自由に伸ばしたかった。一つの型にはめるということは最も劣ること
である」と言っています。「品行より品格」、「この三つを主な精神として、束の間も
忘れなかった」、と言っている。この演説を聴いた千人の生徒はみな泣いたと言います。
これほどの感動を与えたのですよ5月1日、校長の晩餐会のあと、5、600人の生徒が
先生の自宅に行ったそうです。メリー夫人の前で、総代が生花と造花の二つを渡して、
「われわれの先生に対する想いは、この生花のごとく新鮮にして、かつこの造花のごと
く永遠に褪せないでありましょう」と言ったといいます。本当に感謝の言葉を述べた。
それから一年後、教え子たちは、師をご招待して、鉢植えを奥様が持参された。その鉢
植えこそ、生花を育てたものだった。生徒と先生の交流の美しい絵のようなものを思い
浮かべる。このような先生が居たということを。教えるとは希望を教えることです。

広野先生との会合で、先生は「教育とは情熱である」とおっしゃった。教師には二通り
あって、まさしく教える先生と、火をつける先生。まさしく火をつける先生によって、
私はここにいる。先生と の会食のときにハーバード大学でのことをおっしゃった。ハー
バードでは、未亡人が、全財産をハーバードに寄贈するという人が多い。最高学府で人
類のためにという人が多い。ハーバード大学ではその基金を絶対に無駄に出来ない。調
べ抜いて投資して、この基金を増やしているのだそうです。建学の精神も素晴らしい。
「この学び舎に入りて、学を深め、国と民とに奉仕せよ」ということになっているそう
です。

本当に日本には素晴らしい伝統があり、自然と一体感と清らかさ、節度の美、そういう
ものは世界でももてる。どんどん文化を発信していくべきです。

なによりも感性の教育が大事。学んで考えようといのが大事。夢見る力。

東京大田区の中学二年の女の子から手紙をもらいました。この題名が「夢をください」。

もし、だれかがわたしに「あなたの欲しいものを一つ何でもあげる」といったら、
 わたしは、すぐに言うだろう。「わたしに夢をください」と。

 わたしは今、疲れているのです。友だちとのつきあいに、テスト、テストの学校に。
お願い、だれか わたしに、夢をください。胸いっぱいに息をすいこんで「よしっ、や
るぞ」と
体の奥から叫べるような夢をください。一つだけの一つだけの夢をください。

 叫びですよね。こんな状態に皆さん追いやっているのですよ。恐ろしい事件を起こす
のは当たり前。命に対して敏感でなければいかないと思います。いろんな自然の中から
感じ取ってもらえるもの。自分の内なる世界に素晴らしいものがあるということを発見
するべきです。

哲学者のアラン。幸せになろう。子供たちも幸せになるように教育しなければならない。
自分の機嫌を上機嫌になるようコントロールする。いろんな条件が悪い中でも、状況を
作り出す。こういう精神が大事でと思います。

大脇
以前、鈴木先生は「教育は魂と魂のふれあいだ」「吉田松陰然り、クラーク博士も六カ
月も教えていなかった。教育は時間じゃないよ」とおっしゃった。

一色
私がデザインした乗馬クラブのクリスマスパーティー。その会合で、突然、自分の恩師
の言葉として、「高きものへの憧憬 深きものへの魅惑 熱きものへの感激 心震わせ
るものへの涙」私も震えがおきた。

新谷
一色先生の話を聴いていると知行合一という言葉を思い出した。ハーバードの話をお伺
いしてみても知行合一。それがいまの日本では非常に弱い。これだけいろんなことが情
報発信され、それが出来ていないという状況。

中川
私は30年ほど実業界にいて、それから大学に行って15年目。私は、いまのままでは日本
の教育をみて日本は太刀打ちできなくなるのではないかと思う。中国でもハルピン工科
大学で、集中講義していると、そういう学生と比較しても、非常に危機意識をもつ。規
範がない。結婚と葬式のときぐらいで、宗教がほとんど形骸化している。昔はちゃんと
仏壇にお供え物して手を合わせる。やはり、宗教が非常に重要だ。宗教と日本の教育、
ビジネス。この三つがほとんど形骸化している。まず、ビジネスは経団連メンバーのな
かから企業不祥事が出ている。最も民営化が遅れているのは文部省ではないかと思う。
私が驚くのは大学が800ある。大学を無造作に認めることで、数が増え教育の質が落ち
ている。スウェーデンで「何で日本には大学があんなに多いのか。スウエーデンには4
つしかない」と言われた。日本では、いまだに作っています。そこに文部行政の問題が
あると思う。ビジネスも倫理が無い。儲けさえすればよい。そして宗教。この三つだが
問題だと思う。

これをもう一遍組み直なおさないとだめだと思う。立派な国というのは、文化と、歴史
と、宗教がある。高校時代にカトリックの高校。鹿児島のラサール。戦後5年経って創っ
たのです。先生は皆、独身で、世界から来て教育をしている。ここで戦後、日本の日の
丸を掲げた。戦後すぐですから、アメリカに怒られるのではないかと言ったらそうでは
ない。「日本は戦争に負けたけど卑下する必要は無い」と教師が言った。そしたらみん
なびっくりした。校門に入学式のときに日の丸がある。倫理を収めないと卒業できない。
私立ですから。新約聖書、旧約聖書、英語、倫理、哲学。それで、先生は全部外国から
きた人で一生を教育にささげている。それを見て私は、日本の教育は問題があるのでは
ないかと思った。

世界の動きがモノから、お金の投資で儲けるという風潮になっている。それから文化の
輸出。ソフトパワーでやらないと、先進国には太刀打ちできない。文化とは何か。教育
です。日本は文化力が無い。宗教が無い。ソフトパワーを付けるものは教育だ。大学で
は間に合わない。三つ子の魂百までですから、小さい頃に教えないと身につけない。欧
米では小さい子の教育は厳しい。ですから海外20カ国行って仕事してきたが、海外駐在
する場合に、まず勉強。そこの国の宗教を勉強した。そこの本当の歴史と文化を知らな
いと、口先だけでは限度がある。最初の駐在がイラクだった。イラクの勉強をした。ア
ラビアンナイトの小説を読み、アラビアのロレンスの映画も見た。簡単なアラビア語を
学んだ。結局、グローバルの時代の交流では、その国の歴史、文化、宗教を勉強しない
と、口先だけになってしまう。
これから日本が国際化しないと、国内の人口は少なくなる。これからは日本人の考えを
変えて、相手の文化に尊敬心を与えるようにしなければならない。

もう一つは、日本の情報は操作されている。イラン、ほとんどが私の見たところ、北朝
鮮にしても、悪く悪く操作されている。明らかにアメリカの操作された情報が入ってい
る。ジャーナリズムも本当にいい加減です。実践の無き理論は空虚だ。ただし理論無き
実践は危険だ。

北朝鮮に10年前に行った。新潟から桜丸に乗って。羅津先峰というロシア国境のところ
に行って会議に参加した。そのときには自由化しようということだった。国際自由貿易
地帯をつくるということで。260人ぐらいも外国人も、新潟から来た。帰ってきた途端
に、アメリカが「あそこは核開発をしているから」ということで開発計画をしまいまし
た。小泉のときにも潰した。ですから北朝鮮も行ってみて、話をして、僕ら向こうの人
たちと話をしたのですが、いまだにEメールで年賀状が来る。

アメリカの朝鮮研究所というところに行って僕がびっくりしたのは、悪の帝国だのと言っ
ていて、なんとアメリカの大学は、北朝鮮の大学と提携しているのです。ですから表面
的な情報だけで判断すると、大変危険です。

小松
それはなぜかというと、アメリカの国是というのは、人民の人民による人民のための政
治。人民というのはアメリカ合衆国人民なのです。そのために戦略的政略的戦術的にや
るというのは、アメリカ国民の義務と責任であり、当然なことなのです。

小松
明治時代に、情報という言葉は、森鴎外が作ったという説がある。発する方はインフォ
メーション。受けて側はインテリジェンス。そのためには哲学(フィロソフィ、概念)
これは西周が作った言葉。なぜ、こういう二人が生まれたか、時代背景、環境がある。
これは外様の雄藩、毛利がある。石見銀山の天領がある。そして親藩の浜田藩がある。
津和野は中に禁制のキリシタンを抱えていた。このキリシタンが非常に信仰厚くて、国
内を治めるというのは至難の業。そのためにいかにして文化レベルを上げるかというこ
とを徹底してやった。

中国の清華大学は実は、アメリカが作った大学というのは意外と知られていないのです。
これはある面では政略的戦略的に、アメリカの憲法、人民の人民による人民のための政
治。見事なぐらい、これと整合性がとれている。

日本の国是をどうするかと考えたときに、実は日本以外は、飢餓と殺戮の中でで出来た
理論。日本は飢餓と殺戮が終わった中にある。そこでの論理体系というのは、世界中、
何処にも無い。逆に言えばそれを世界は、今、最も必要としている。中国の有名な言葉
の中に、「繁栄の極みに衰退の芽は生じ、衰退の極みに繁栄の芽は生じる」という言葉
がある。プロジェクトの理論が仮にできたとしても、立ち上げるためには近隣諸国の理
解と賛同がなければできない。他力本願というが、自力と他力があって、初めて本願な
のです。

クラーク博士の「少年よ!大志を抱け」というのは、どこの本を探してもないというの
です。「旅に出なさい」と。自分は何のためにいるのかということを考えたときに旅に
出ると、いろんな理不尽なことに出会う。そこで「自分は何をなすべきか」ということ
を発見すると言われている。だから“アンビシャス”というのは「訪ねる」という意味
があると私は聴いています。

皆さん「夢を持ちましょう」と言いますが、夢は荷物ではないから持てません。夢は芽
生える。目標がそこから生まれるような情報触媒を提供する。アメリカは東西の冷戦を
50年間戦う中で、完全に戦争中毒になっている。日本は敗戦国なのです。敗戦国が戦勝
国よりも豊かな生活をしている。それは沖縄に行ってみると分かる。新車に乗っている
のは日本人。中古車に乗っているのはアメリカ人。敗戦国が豊かな生活をしたというの
は人類の歴史に無い。だとしたら、何かの役割がある。少なくても自分が人間であると
いう認識があれば、これから何をなすべきかが分かる。

東京という地域は大変です。なぜかというと、人類は生命であるということを認識でき
ない地域。中国の下放政策ではないですが、下方政策をやる以外に方法はないのではな
いか。

大脇
アメリカの教育ですごく学ぶところがあったと思う。生涯教育というか、いつでも出れ
るが、いつでも入れるという。僕は早稲田の時代は学園紛争で大学ではほとんど勉強で
きなかった。アメリカで改めて勉強していました。アメリカ発、日本校が全滅したのは、
文部省が単位を認めなっかったからです。

ハーバードとかスタンフォード、コロンビア大でびっくりしたのは、大学院生は何万人
もいるけれど、大学のほうは4千人ぐらいなんです。

日本は、今の大学院は大学の付け足し。優秀な人は企業に行って、学者にでもなるかと
いう人が大学院にいく。「国際A級大学を!」そういう憂国の情から筑波大学も生まれ
てきた。

日本の大学を改革して留学生を大きく受け入れることが大切だと思う。中国で驚いたの
は、優秀な学生を日本に送りたくても、賄賂とコネの障害が高いこと。有為な学生を支
援する真の奨学制度を確立すべきだというのが第一。

青年がなぜ今、腐っているか。自分が必要と感じられていないから、「青年よ!世界の
荒野を目指せ!」世界に送り出すべきだ。そういう意味でODAをモノの援助から、人の
援助そして教育援助へ。日本起死回生の国策として、日本には兵役義務が無いのだから
だから、20歳前後の若者は2、3年世界へ出して、世界のために汗をかかせる。海外ボ
ランティア経験者ないと、外務省や文科省の高官にはなれないというような認証制度に
すれば、優秀な青年が先を競って海外へ出かけるのではないでしょうか? この案を金
容雲先生にお話したら、「どうして日本だけでやろうとするのですか?韓国の青年とと
もに一緒にやってはどうですか?」と提言を受けました。これが、未来構想が提案する
日本の起死回生の国策です。

私が1980年代末、全米に文部省から派遣している職員が「たったの一人だ」聞いて耳を
疑いました。鹿鳴館時代ならいざ知らず、国民全てが海外と直接、接しているトータル
コミュニケーション、国際化の時代に、外務省だけですべてやろうとしていること自体、
時代錯誤もはなはだしいと思います。「今、日本が、国際社会において何をすべきか」
というのが分からないのが、最大の障害ではないでしょうか。

鈴木
筑波大学が国際A級だという話のときに、ヨーロッパに一つ、アジアに一つ、南米に一
つぐらいで、筑波大学の分校を作ろうと、本気で考えた。かなりのところまでいったの
ですが、文部省と外務省の縄張り争いが障害となった。

小松
モノには順序がある。道理を追求する、論理をとことん追求する中から、「一を生じ、
一は二を生じ、二は三を生じ、三は万物を生じる」という老子の有名な言葉がある。

それには上下の格差がある、二つ目に論理的に議論をする、そうすれば必ず、真価を促
す知を生み出すことができる。

日本人はだらだら人の話を聴きすぎる。それをさえぎって、もう一度お願いしますとい
うことができない。だったら、相手の方から角度を変えて話をすることができる。丸暗
記している人は角度を変えて話すことができない。これをすると、本物か偽者かすぐに
分かることができる。コミュニケーションの入口を共感に持っていく人と、説明に持っ
ていく人と。ここが先ず入口なのです。
新谷
基本的に、教育という言葉があまり好きではない。教えはぐくむというのはいかにも乱
暴だ。うちの親父はずっと教育者をやってきた。「高校生が社会にいかに役立っていけ
るか」という勉強会をやっている。それにもにもかかわらず、突破口が開けなかった。
秩序の上に秩序を重ねるという時代ではなくなっている。戦いをはぶきながら、物事を
作り出すという時代ではない。

混沌の中に日本がいる。どっちに転がるか分からない、衰退の一歩になるのか、繁栄す
るのか分からない。栄える方に行くとすると、私はランドマークが必要だと思う。ラン
ドマークを日本の全体の中で、揺らぎが起きるように始めないと変わらない。
よく企業の中ではトップダウンですか、ボトムアップですかという話が出てくるのです
けども、トップダウンでも、ボトムアップでもだめ。両方で出てこないとだめです。

小松
?啄同時です。

新谷
シンクロニシティとも言いますね。

小松
創業経営者にはそれはコツなのです。それは靖国に象徴される歴史問題を、これは命の
認識の問題なのです。命をどう認識しているか。これは地の利、人の和、これを情報触
媒を使って?啄同時になるように持っていかなければならない。

鈴木
みなさんからぜひ教えていただきたい。どうにも分からないのは、アメリカは今、畜生
のような人や、神様のような人もいる。アメリカの本当の腹というのは分からない。し
かし中国や朝鮮だとなんとなく分かのですが。その辺は東洋人、西洋人という違いがあ
るのではないか。いまのアメリカのいろんなことだって、100年前はイギリスがやった
ことであり、オランダがやったことです。その辺をどう解釈したら良いのだろうかと。

小松
先ずわれわれは生命だと。生命とは個を持続したい。二つ目は種を持続したい。このカ
テゴリーから逃れることができない。それを意図的にしたのが、お坊さん。種を断つと、
個が伸びる。

人類は未熟児で生まれる。そうすると必ず「他は自分のためにある」という回路が生ま
れる。そうするとどうしても残虐性を伴う。それは人類としての特性なのです。それを
受け入れるしかない。

中庸とあるが、これはいつの時代も分からない。「偏らないを中と言う」、偏らないと
はいかにしてそれを持続するかということ。自分の代はもちろん、子孫まで、そこにサ
イエンスとテクノロジーというのを考えたのがアングロ・サクソン。いま、そのしっぺ
返しを受けている。アメリカの最大の敵は肥満だといわれている。化学物質を使わない
と農業ができない。それをどうやって救済するのか。だとすれば日本の出番。先進国の
中で湿度が高いのは日本だけ。日本の中で湿度が高いのは裏日本。表が行きづまったら、
裏が出てくる。親切と書いて、親を切ると書いてある。なぜ親切が親を切るのか。自分
の親にしてもらったと思わず、よそのおじさんに育ててもらったと思うと、自分が何を
しなければならないか見えてくるでしょう。だとしたら自分に何ができるか見えてくる
でしょう。社員が「親に虐待されたらどうしますか」という。「殺されなかっただけま
しじゃないか。それだけで感謝だ。」と。

大脇
アメリカは、政治とか経済がゲーム理論に基づいて、ルールを重視する。アメリカの文
明は科学技術を生み出したすごい文明で世界を席巻していますが、親、生命を忘れた文
明。もういちど東洋的に、忠孝を再評価する時期にしている。今日、たまたま沈清
(シムジョン)という親孝行の話を、バレエにした公演がある。オトタチバナヒメの話を美
智子妃殿下がインドで世界へ向けて紹介された。自分を犠牲にしても人のために尽くす
という喜び。今、日本はそれを忘れているのではないでしょうか?知的教育だけではな
く、芸術を通して日本国民を感動させることが重要ではないか。チャングム、ホジュン
も、クッキーも、何か生きる元気を与えてくれます。アメリカのスリルとサスペンス浅
薄な物語ではなく、忠孝烈、人間の本質、生き様に迫っている。こういう精神性の豊か
な物語が、日本から消え去っているのは何でしょうか。もっと人の心を感動させるよう
な物語を作るべきではないでしょうか。

中川
さきほどからアメリカは戦争中毒とおっしゃったけど、アメリカ経済が武器産業に組み
込まれていて、5年に一度ぐらいに在庫を吐き出さないと回らない。最近、ブッシュの
ネオコンに非常に顕著に現れている。香港だって、お茶を買いすぎて、ケシをインドで
栽培させて、アヘン戦争になった。アングロサクソンというのは非常に問題があるなと
感じている。日本の文化の2000年の源流には韓国、中国があると思うのです。これから
は脱アメリカ、入アジア。もうちょっとアメリカ一辺倒から、軸足をアジアに移すこと
が大事だと思う。

小松
それは不遜な考え方で、アメリカがあったから今日の日本がある、技術をアメリカから
輸入して、アメリカがマーケットを提供してくれなかったら不可能なのです

中川
買ってくれたのではなくて、安いから買った。これはビジネスライクの問題。だからそ
れほどアメリカに対して恩義を感じる必要はないと思う。日本人の努力でここまで出し
たのですから。

小松
日本は戦争が終わってから、分断する運命にあった。

中川
アメリカはイラクを攻撃した、根拠はなく、国際法にも反した。そういうことに対して
どうお考えですか。

小松
ですから、そういうことを、しなくてもすむように、日本が同盟国であれば、ソフトパ
ワーでアメリカがそういうことをしなくてもすむようにやらなければならない。

中川
やっていないですよね。

小松
だから私が民間としてそういうことをいろいろと、やってきているわけです。「明日、
地球最後の日だとしても、今日りんごの木を植える」ということわざがあります。楽観
主義ということではなくて、自分が人間としての一生を送りたかったら、プロセスとし
てやり続けるほかないのです。

一色
人類同胞として、命というものを基本として、何らかのステートメントを出して行ける
のかどうか。いろんな思想、宗教、いろいろ言っても戦争になるが、一つ共感できるの
は、芸能の世界だ。遺伝子の中に組み込まれている情報は、一方は極限に向かう、もう
一つは極地に向かう。このバランスとっていない。もう少しゆったりと、調和の取れた
情報から。戦争ほど不経済なことはない。死の商人は別としても。理想論といわれれば
それきりですが、命の尊厳とは、命の中に驚くべき内在しているものを開発して、お互
いに敬いつつ、人類がそれに向かわなければならない。

新谷
前提条件としてアメリカも韓国も好き。キーワードとして感謝。宗教の中に感謝の心が
入っているのは素晴らしい。しかし、何らかのときに集団を一つの方向に持っていこう
とすると大変なことになる。日本をどうしようという方向付けの議論があれば、たぶん、
中川先生のような方向と、小松先生のような方向が対立していると思うのです。だとす
ると、こういう風に議論する場が中国でも韓国でもアメリカでもあるのならば、問題は
どう調和していくかということだと思う。

鈴木
イギリス、フランス、オランダが、19世紀、アフリカ諸国、インドとやってきたことで
す。確かに文明をもたらしてきている。と同時にお金をもうけている。と同時にアメリ
カが自由のためだという。これは本当だけど、どうも欧米の人たちと、アジア、アフリ
カの人たちに来るときには、人種が違うというのが、あるのではないか。
岩倉使節団がインドに言ったら、「あんたたちも黒黒といわれたか」と聞かれたらしい。
まだ人種偏見が残っているのでしょうか。

中川
原子爆弾を日本に落としたときにも、黄色人種という面があったと言います。民主主義、
平等主義というが、過剰なところがあるのではないでしょうか。

鈴木
同じことは日本が、中国に一段蔑視した。そういうことになると先ず、文化の力から行
かんといかんのかなあ。

大脇

アメリカはイラクでやっていることが出ている。北朝鮮や中国、ロシアが何をやってい
るか余り知られていない。バランスを持ってみることが必要だと思います。

ブルッキングスの中心的なスタッフが言っていました。「アメリカ人にとって人権は非
常に重要な問題。中国に対しても、堕胎問題で批判的な意見が多い」と。「スパイク」
というドキュメンタリー小説がベストセラーになりましまた。ベトナム戦争で米国が負
けたのは、情報戦争。米軍の情報の中枢に北ベトナムのスパイが潜入し、アメリカがベ
トナムでいかにひどいことをしているか米国の家庭に流した情報操作にあることを検証
したドキュメンタリー小説です。日本が第2次大戦敗北の大きな要因の1つは、ゾルゲ
というたった一人のスパイ情報でした。イスラエルも命がけの情報戦争。価値ある情報
をいかに集めるか。諜報の重要性を再考すべきでしょう。

一色
全世界の人が本当に真に望むものは何かということ。

中川
アメリカがもうちょっと一極支配じゃなくて、世界平和のために考えるべきじゃないかと。

新谷
もうアメリカやめましょうというか、がんばりましょうというか。

中川
アメリカ依存度を見直して、もう少しバランスをみるべきじゃないかというのが僕の理論。

小松
アリゾナ、戦艦大和、なぜ沈没したか。爆撃によってと、ほとんどがそうおっしゃる。
アリゾナ記念館に行って、突撃した飛行機の凹みがある。魚雷と爆撃によって、火薬庫
に引火している。引火することによって、戦艦大和も同じ。大和が、敵機が来たら燃料
と火薬を全部海に捨てていたら、おそらく沈没していませんよ。

核は核大国が分散管理して21世紀を迎えた。分散管理が最も危機。この核大国をいかに
して救済するかというのが21世紀のテーマ。日本と、韓国と、北朝鮮。この三カ国は言っ
てみれば、お公家さんの国みたいなものです。一つの例で言いますと、ウィーンのハプ
スブルグ家は、十数人の子供を生んで、とことん文化のレベルを上げた。その結果、素
晴らしい娘になった。その結果、周辺の国からこんな素晴らしい女性を嫁さんにしたい
といって来た。これは政略、戦略とは180度違うわけです。ものの見事に小国を守り抜
いている。朝鮮もそうなのですね。ここもお公家さんの国。日本で言えば琉球王国。核
大国に囲まれたこの地域が、日本が情報触媒になって、韓国と北朝鮮に働きかけること
によって、アメリカも助かる。アメリカの知識層が。お金持ちほど平和を望みますから。

中川

それに逆行しているのが小泉さん問題ですね。

小松
いや違うんですよ。小泉さんはやりすぎだと思うけれども、小泉さんの功績というのは、
これだけ歴史問題が根深いものだということは、歴代の首相はだれも知らなかった。だ
から逆に言えば、それをどのように解釈して活かすかということは、国民のレベル、国
民の知が試されている。
一色
ギリシアのことを思います。ローマに征服され、滅びて、世界文化になった。それでロー
マは世界帝国になっていく。いまこれだけの情報化社会で、人間もお互いに共感、感動
させることができる。ギリシアは三分の一は芸術教育。今の文部科学省はとんでもない
ことをしている。スパルタは何も残っていない。アテネは、壊れたものですら美しい。

小松
直接民主主義の発祥地はギリシア。間接民主主義の発祥は出雲大社と言われている。ちゃ
んと相手のほうから持ってくるように誘導したわけです。これは智慧なのです。


一色
和譲というのは恐ろしい言葉です。

小松
そう。究極の昇華、覚醒、蘇生、この三つが融合していくと、和譲になるのです。

中川
ギリシアの文化が征服されたけども、というのは何ですか。

一色

トロイ戦争なのです。何のために戦うか兵士が分からなくなったときに、ヘレンが城壁
の上に現れた、それを見た兵士が突然、「この女性のために戦う」と。美のために戦う。

小松

21世紀は生命科学を使って、これによって持続可能な社会を作る。これが21世紀の日本
の使命だと思う。われわれも生命の中の一つ。DNAに書き込まれている。ひらめきと仮
説が出てきたならば、それを検証するのが学者、その学者を作るのが大学なのです。こ
こをみんな勘違いするのです。ひらめき、仮説が出るのは、学校ではできない。この人
は探さなければいけない。

一番レベルの低い経営者は利益を出すことができる。「利益を出せない人は経営者では
ない、罪人だ。」これは松下幸之助さんが言った言葉。経営者は継続のためには利益を
出し続けるほかない。競争社会の中で利益を出し続けるのは至難の技だ。そうするとど
うするかというと、ブランド化だ。そしていわゆる研究開発や教育ができるようになる。
その上にはどうするのかというと、ブランドができると独占になっちゃう。そうすると
開放する。開放すると何が起こすというかというと、文明が興る。文明が興ったら、次
の上のレベル。文明の上には文化をつくる。文化とは何かというと、思考の枠組みだ。
思考の枠組みということは最大公約数でいうと対立の文化、共生の文化。

なぜハンチントンの文明の衝突という理論が成り立つかというと、対立という思考の枠
組みがあるから。循環は微生物を使わないとできない。でもそれはちゃんとできるよう
になったのです。ありがたいことに核の拡散の恐怖のおかげなのです。この核の拡散の
恐怖がなければ、人類にはできないのです。これによって鳥インフルエンザ、これは非
常に大きな脅威になっている。貧者の核といわれる細菌兵器が問題になっている。そう
すると何が起きるか。信用秩序が崩壊するのです。

支店長、局長、いろんな方とお話します。国家は何から成り立っているか。一つは信用、
一つは食、一つは軍事。国家はこの三つで成り立っている。この三つのどれかを放棄し
なければならないといわれたときに、異口同音に信を放棄すると応える人が日本のリー
ダーなのです。「信なくば立たず。」信がなければお茶は危なくて飲めないのです。今
の食はひどいものです。まともなものが出せるはずがない。そして子供たちがアトピー
になる、当たり前じゃないか。末端の食の産業は超過酷な産業です。それでまともなも
のが口に入らない、当たり前ですよ。

鈴木
本当に創造的な学者ならアイデアが先にある。

小松
私は学者では無理だと思う。それは経営者でなければ。生命ですから、餌を自分で獲得
するものでしか、無理なのです。

新谷
自分があることに感謝して創造していく。小松先生が言っていたことは重要だ。
                                  以上

教育改革への提言