緊急提言「地下原発建設」
 
二度と人災3.11を起こさない!

               
前 文

 地球市民機構は東日本大震災で起きた原発事故を二度と起こさないために
「地下原発建設」を提言する。
 


           
要 約 

 
東日本大震災は、巨大地震と津波、原発事故の三重苦をわが国にもたらした。
わけても国際評価尺度がレベル7(最高)に引き上げられた原発事故は、燃料
棒露や放射能汚染によって日本のみならず世界を震撼させた。これによって世
界は原発建設にブレーキがかかっている。だが現実問題として、原発そのもの
を封印して人類に未来はあるのか疑問がある。封印すべきは原発事故発生時の
放射能汚染の完全封印であり、原発そのものの封印ではない。

 危機に遭遇した時、その民族の底力が図られる。わが国は青函トンネルやを
掘った実績があり、東京湾アクアラインや地下50メートルに掘られた大江戸
線も作った。これらは今回の巨大震災でもびくともしなかった。こうしたわが
国の地下建造技術を存分に生かして、地下の竪穴や山腹の長い横穴を掘り、空
洞部に原子炉を設置する「地下原発」建設を提言する。

 一歩誤れば大惨事を引き起こしかねない原子力発電所の建設および運転では、
あらゆる事態を想定しなかければならない。その意味でも、どういった事故が
発生しようとも最終的に放射能を封じ込めることができる「地下原発」こそは、
すべてを想定した上でなお「安全」を担保できる原発といえる。 地球市民機
構は復興計画の核心として、「地下原発建設」を提言する。 東日本大震災を
「負の遺産」にしないためにも、試練をチャンスに変え、マイナスをプラスに
転換していく長期戦略こそが重要だと考えるゆえんだ。それこそが多大な尊い
命が失われた東日本大震災の犠牲者に向けたはなむけだ。 わが国は廃墟と化
した先の大戦から再起し蘇生の息を日本列島に吹き込んだし、石油ショックも
乗り越えた。再び歴史的な試練を迎えた今、萎縮することなく英知を結集し、
ダイナミックな政治的リーダーシップの下、日本再生へのシナリオを構築しな
ければならない。



             
本 文

 2011年3月11日の東日本大震災は、震度9・0の巨大地震と想像を絶
する津波、さらに福島第一原発事故の三重苦として東日本を襲った。わけても
特筆すべきは人災として起きた原発事故だ。1ヵ月後の4月12日に国際評価
尺度がレベル7(最高)に引き上げられた原発事故は、いまだ解決の道筋すら
立っておらず、相次ぐ水素爆発や燃料棒の露出は日本のみならず世界を震撼さ
せる事態へと傷口を広げた。

 また東京電力は4月4日、福島第一原発第2号機から海に漏れ続けている高
レベルの放射性物質を含む汚染水を集中廃棄物処理施設で貯蔵するため、同施
設に滞留している低レベル汚染水1万1500トンを海に放出し始めた。過失
によって汚染水が海に漏れるというわけではなく、意図的に放射性物質を含む
汚染水を海に排出することは、確信犯といってもよく事の責務は大きい。人類
の公共財を汚染し、人々の健康上の危害をも与えかねないリスクが厳然として
存在するからだ。

 海洋汚染に関し国際的取り決めであるロンドン条約では、海洋性廃棄物の海
洋投棄を原則的に禁止している。しかし原子力安全・保安院は「ロンドン条約
では、船や飛行機からの海洋投棄を禁じているのであって、陸上の施設からの
放出は該当しない」として口をぬぐっている。「陸上の施設からの放出は該当
しない」というのだ。これこそ法律の文理解釈で逃げ道を作り、結果として困
難な状況を引き起こしてしまう法匪のそしりを免れがたい。

 「ロンドン条約」第1条には、「締約国は、海洋環境を汚染するすべての原
因を効果的に規制することを単独で及び共同して促進するものとし、また、特
に、人の健康に被害をもたらし、生物資源及び海洋生物に害を与え、海洋の快
適性を損ない又は他の適法な海洋の利用を妨げるおそれがある廃棄物その他の
物の投棄による海洋汚染を防止するために実行可能なあらゆる措置をとること
を誓約する」と書いてある。わが国はその加盟国なのだ。

 また事故発生当初、原発関係者は「想定外」という言葉を連発した。だが、
最悪の事態を想定し対処するのが安全対策の基本である以上、違和感を感じざ
るを得ない。「想定外」ということで、安全を担保すべき技術者に免罪符が与
えられるわけでは断じてない。

 一歩誤れば大惨事を引き起こしかねない原子力発電所の建設および運転では、
あらゆる事態を想定しなかければならない。

 その意味でも、どういった事故が発生しようとも最終的に放射能を封じ込め
ることができる「地下原発」こそは、すべてを想定した上でなお「安全」を担
保できる原発といえる。 放射能汚染の風評被害は深刻で、海外の日本食レス
トランでは閑古鳥が鳴き続けている。これらの日本食レストランで使われてい
る食材は、日本からの輸入品は、全体の1、2割程度でその多くは現地調達、
もしくは近隣国からの輸入品となっているものの、日本食材の安全性が確実に
浸透するまでは好転することはない見込みだ。

 さらに深刻なのが海外の原発計画にかけられた冷や水だ。例えばタイでは、
増大する電力事情を手当てするため2020年から国内5ヵ所に原発導入の計
画を策定しており、昨年末にはその支援のため日本原子力発電(東京)がタイ
発電公社と原発の建設や運転に向けた技術協力協定を結んだばかりだった。

 そのタイでアピシット首相は4月、原発計画見直しを検討する方針を打ち出
した。庶民的感覚からすれば、「緻密な日本人でさえ事故を防げなかったのだ
から、われわれの手におえるはずがない」といった率直な実感がある。アサン
プション大学が3月末に行った世論調査では、原発建設に8割以上が反対して
いることが判明している。わけても中間層や知識人が多いバンコクの原発反対
派は95%の高率を示している。 ドイツのメルケル首相も3月、同国の原発の
運用年数を延長する計画について再考すると表明した。

さらに豪州のギラード首相は、「(与党)労働党の考えは明確だ。われわれは
原発を不要と考えている。豪州に原子力産業を作る考えはない」と語った。ま
たスイス政府も4月、新しい原発建設の認可を当面見送ると発表している。 
こうした状況を座視すれば、わが国はベトナムを第一歩として始まろうとして
いる原発輸出も頓挫せざるをえなくなる。

 だが、試練の時こそ国家の総力をあげての底力が発揮されるべきチャンスで
もある。わが国は、青函トンネルやを掘った実績があり、東京湾アクアライン
や地下50メートに掘られた大江戸線も作った。これらは今回の巨大震災でも
びくともしなかった。こうした
わが国の地下建造技術を存分に生かして、地
下の竪穴や山腹の長い横穴を掘り、空洞部に原子炉を設置する「地下原発」
建設を提言する。


 現代人の経済活動や生活を支えるエネルギーである電力を安価に量産できる
のは、水力資源を開発し尽くした今日、原子力しかないという現実にも目を向
ける必要がある。工業国として国際競争に生き残るには、安価で大量の電気は
必要不可欠だ。大惨事の処理の只中で困難なことではあるが、国民は皆、国の
命運に重ねて、原子力の将来を冷静に考える必要がある。

 世界を震撼させた「フクシマ」ながら、原発政策を変えない国が存在する。
オバマ米大統領は3月30日の講演で、2035年までに電力の8割を温室効
果ガスを排出しない資源で生み出す方針を表明し、「原発はその大きな柱だ」
と語った。オバマ大統領は、原油などエネルギー資源の海外依存度を減らす必
要性からも原発推進を強調している。フランスも現在稼動中の原発の安全性を
チェックする必要性は認めたものの、推進方針に変化はない。 さらにブラジ
ル、ロシア、インド、中国、南アフリカの新興5か国(BRICS)の首脳も
4月14日、「原発増設は不可避」との認識を示した。高度経済成長を支える
電力の需要増に対応する必要があるからだ。 そのためにも最終的に安全を担
保できる原発の開発が急務となっている。

 
電力中央研究所は、「地下原発」が事故を起こした場合、花崗岩や砂岩
の岩盤内から地表への放射能漏れをの被害はほとんどないことを実証済みだ

特に放射性物質の中でも呼吸によって容易に人体に入るヨウ素131が地表に
もれるかどうかが一番の懸念材料だが、半減期8日間のヨウ素131は地中で
接触する岩盤に吸着し、地表はほぼ安全であることが確認されている。

 こうした「地下原発」こそ、東日本復興計画の核心に据えるべきだと地球
市民機構・現代市民フォーラムは提言する。
東日本大震災を「負の遺産」にし
ないためにも、試練をチャンスに変え、マイナスをプラスに転換していく長期戦略
こそが重要だと考えるゆえんだ。それこそが多大な尊い命が失われた東日本大震
災の犠牲者に向けたはなむけだ。

 わが国は廃墟と化した先の大戦から再起し蘇生の息を日本列島に吹き込んだ
し、石油ショックも乗り越えた。再び歴史的な試練を迎えた今、萎縮すること
なく英知を結集し、ダイナミックな政治的リーダーシップの下、日本再生への
シナリオを構築しなければならない。

2011.4.11
     
地球市民機構・現代市民フォーラムエネルギー研究班有志
                           



松野です。以下のとおりコメントいたします。

1.今までの背景

 地球温暖化対策会議の中で原子力発電の必要性が最近取りざたされるようになり
ました。

 原発回帰の風潮が高まり、成長著しいBRICSやアジアで数百基もの原発が建設され
ようとしています。

 中長期的にみて1,000基ほどの原子力発電所が全世界で必要だと言われています。

 それらの受注を目指し韓国などは官民一体となって、最近ではUAEアブダビ原発の
受注に成功しました。

 東芝は米国大手の原子力発電メーカーのウエスチングハウス・エレクトリック社
を買収、米国マイクロソフト社ビル・ゲイツ会長が出資する新型原子炉開発のベン
チャー企業との技術協力契約を結んだばかりです。

 その新型原子炉とは、燃料交換せずに100年の連続運転が可能な小型原子炉のこと
であり、既存の軽水炉とほぼ同等の出力が確保されます。

 一方、三菱重工業はフランスに拠点を置く世界最大の原子力関連会社アレバ
との資本提携を調整中、日立製作所は米国ジェネラルエレクトリック社と提携して
います。現在大手の原子力関連メーカーは、グローバルでアライアンス活動を積極的
に行っているところです。

 「10年間メンテナンスは不要」の小型原子炉が米国で開発され、実用化まであと
2〜3年はかかるようですが、既に130社から予約注文を受けたとのことです。その
事業主体は米国ベンチャー企業で、10年間で1,000基を売る計画です。

2.今回の原発事故の持つ意味

 いままで「安全だ」と言ってきた原発は実は「極めて高コストかつ危険極まりない
ものだ」ということが世界的に露呈されてしまいました。

 原子力行政の背景にあるのは「政治的駆け引きだ」と考えられます。日本が国策と
して原子力行政を推し進めてきた理由として、米国中心のセブンシスターズと呼ばれ
た石油メジャーからの脱却、エネルギーの独自調達による安定的確保のためだと表面
的には考えられてきました。

 ところが、現在の原発で出される核燃料廃棄物の再処理や廃棄処理は、ほぼ全て
フランスとイギリスに依存するありさまです。両国で処理してもらい、再び使え
るものは日本に送り返されます。廃棄物(ガラス固化体)については当分の間、両
国で保管し、その後日本に戻され六ヶ所村などで半永久的に地中深く埋められます。
そんなガラス固化体が日本の原発から年間1,300〜1,700本も生じています。

 基本的に原発における核燃料サイクルは、軍事的利用と密接な関係にあり、結果
的に日本の原子力行政もその影響を多分に受けています。日米安保という政治的配
慮により、日本の原発にも軍事的メリットのある核燃料サイクルが取り入れられま
した。ウランとプルトニウムという軍事的に見て大変魅力的な原子を使う核燃料サ
イクルです。

 いくら「トリウム型溶融塩原子炉が良い」と言ったところで、既存体制は産学官
一体となって、米国情勢を背景に既得権益を維持するため、聞く耳を持たないという
のが本当のところかのようです。

 しかし、チェルノブイリ事故を超える量の放射性物質を外に撒き散らした、人類史
上最悪の福島第一原発事故を目の当たりにして、これも全て白紙になることも期待さ
れます。

 福島第一原発の一つの炉の中には、チェルノブイリで排出された2倍以上の放射性
廃棄物がある。今回は4つの炉が事故を起こし、数週間前の米国側の見方では「10%
以上は外部に漏れ、既に少なくともチェルノブイリとほぼ同等の量が漏れている」と
述べています。 

東電は、当時「既にチェルノブイリと同等あるいは超えるかもしれない」と記者会見
で発言しましたが、その直後、政府や世論から「そんなことを軽々しくいうとはけし
からん」との批判を受け、その後はほとんどそのような発言は無くなってしまいました。
悲しいかな、それが日本社会の実像かと思います。

3.日本の今後のエネルギー政策はどうあるべきか(私見)

・原子力利用は遺伝子操作と同様、基本的に人類がやってはいけない
・そのため、代替エネルギー開発を早急に行う
・国内エネルギーの3割が原子力であることから、十数年程度は引き続き原子力利用
 に頼らざるをえない
・現在稼動している軽水炉型原子炉から比較的安全な原子力利用へと速やかな転換
 が求められる

 重要なことは、当面の間、利用しても安全な原子力とはどのようなものなのか?

・現在の原子炉は核分裂型で多くの放射性廃棄物を生み出すが、数十年前まで熱心に
 研究開発されていた核融合は放射性物質を生み出さないクリーンな原子力

・しかし、核融合は技術的にも経済的にも難があり、途中で研究開発が頓挫・特に重
 水素と三重水素を使う際のプラズマ臨界条件は厳しく、プラズマ温度が1億度以上、
 プラズマ閉じ込め時間が1秒以上、プラズマ密度が1×10の20乗以上

・当時は難しかったが、現在では再度チャレンジする意義はあるかもしれない。

・もし核融合が難しいというのであれば、今までと同様の核分裂型で比較的安全
 な方式を考える必要がある。

その有力候補として、トリウム型溶融塩炉である。
・溶融塩炉のメリットは、核燃料が液体のため生成や補給が簡単、燃料の廃棄物は
 再度利用でき危険なプルトニウムが炉の中で燃えてしまうこと小型化が可能なこと
 である。
・溶融塩炉のデメリットは、核燃料の液体が外に出て直接、熱交換器へと循環すること

 実はエンジンでも同様のことがいえる。
 通常エンジンは燃料を燃やす爆発型で、多くの二酸化炭素や二酸化窒素などの
 ガスを排出。高温・高圧化下において油成分を酸化という処理を伴って分裂させて
 いる。

 現在の原発(軽水炉)と同じ概念だと思います。爆発ではなく爆縮という概念は
 できないものかと考えていたところです。

 原子力にたとえれば、核融合ということになるでしょうか。しかし核融合にしても
 相当の時間を要しますので、
現実問題として以下のような組み合わせがベストだ
 と考えます。


・小型化が可能な核分裂炉
・地震や津波にも対応可能で、冷却効果にも優れた岩盤の固い地中の活用
・クリーンで、かつ小型化が可能な核分裂炉としてトリウム型溶融塩炉の活用


 
以上の3つの組み合わせで、現実的かつ暫定的な原子力利用が可能になるのでは
 と考えます。
ちなみに電気通信業界でも、2008年頃から、「多大な消費電力と多大な
 発熱量に悩むデータセンタをコンテナ化(小型化)し、地中に建設しよう」との動きが
 ありました。

 その技術は米国からもたらされ、米国では主に軍事的な背景のあるデータセンターが
 その対象になっていました。

 日本でも同様の傾向があり、当時、一部の新聞(日経)にも掲載されましたが、
 その後、軍事的背景もあってか聞くことは少なくなってしまいました。

 データセンターの消費電力の約半分は、冷却用の空調として使われるものです。 
 現在の原発でも、核分裂で生成された発熱の約3割程度しか実際には使われていま
 せんので、今の産業界の実体を考えれば考えるほど、理不尽な気持ちになってき
 ます。                     
                       以上

   2011.4.29                      


 社会問題・通信メディア評論家・ 信勇会 代表 松野 恭信

〒140-0002 東京都品川区東品川2-5-6 天王洲ビュータワー1801
(TEL) 03-3450-0116 (Mobile) 090-3508-9896
(URL) http://shinyu-kai.net/
(Blog) http://shinyu-kai.cocolog-nifty.com/blog/
(E-mail) y.matsuno@m3.dion.ne.jp, yasmatsuno@ezweb.ne.jp (Mobile)