護憲か?改憲か?
2004年5月4日 第35回新しい憲法をつくる国民大会 発言要旨
新憲法案改正案も検討 新しい憲法をつくる国民会議会長 愛知和男氏
去年、発表した「新憲法案」に反響があった。その中で印象が残ったのは、天皇と国民主
権の問題だ。「国民主権」を先に掲げるべきで「天皇」が先なのは古いという意見があった。
同案は第一章が「天皇」だ。順番が違うだけともいえるが、重要な意味を持っている。われ
われは天皇制を何よりも重要視する。日本の長い伝統、文化を象徴するのが天皇制だ。 道
州制の意見があったが、安易な導入はいかがなものか。同案は中央集権体制を踏破している。
首相公選論は国民の象徴である天皇との関係をどうするのか。日本ではいかがなものか。同
案の「憲法裁判所」と最高裁との関係は検討課題だ。同案で国会は一院制だが、参院廃止で
はなく衆参を一つにする提案だ。来年の大会では同案の改正案を発表したい。
改憲勢力結集の動きも 自民党憲法調査会会長 保岡興治氏
自民、民主、公明の憲法改正勢力が衆議院の95%を占め、護憲勢力の社民、共産は5%
の少数になった。参院選では自民党の憲法に対する基本的な方向性を打ち出したい。 両院
の憲法調査会の最終報告が出てくるころには、各党の案もまとまってくるだろう。それから
先はポスト憲法調査会ということで、両院に常任委員会を設置し、各党の案を明確にして議
論していく。遅くとも二〇〇六年の通常国会から常任委員会を発足させて、国会の議論を活
発化させていかないといけない。
〇七年に選挙の審判を受けた後、三分の二の多数を構成するという最終的な憲法改正の歩み
をしなければならないことも予想される。場合によっては憲法改正をする勢力を結集する
動きが出てくるかもしれない。
「地方主権」の強化を 民主党国対副委員長 武正公一氏
民主党は議論をタブー視しない「論憲」の段階から、憲法をつくっていく「創憲」に移っ
た。党憲法調査会の五つの小委員会は、参院選前に骨子をまとめる作業を進めている。 九
条については、小沢一郎民主党代表代行、横路孝弘副代表が国連待機軍構想について合意を
している。若手議員の中には集団的自衛権を認めるべきだとの意見もあるが、民主党の選択
肢の一つに上がってきたことは間違いない。 地方主権も強く打ち出していきたい。外交、
安保などは政府に権限と責任を集中させる一方、任せられるものは地方政府に委ねることを
条文に明示すべきだ。 民主党は衆院の70%以上を当選四回以下の議員が占めている。若
手議員には憲法改正に抵抗感が少ない。
国民投票法の制定を 駒澤大学副学長 竹花光範氏
日本国憲法九六条の改正手続きは大変不備な規定だ。例えば、国会の両院で総議員の三分
の二で憲法改正案を可決するというが、総議員の意味がはっきりしない。国会で審議する憲
法改正案を誰が作って提案するのか書いていない。提案権は誰なのか、その場合は何人の議
員で提案するのか、「総議員の三分の二」の「総議員」とはどういう議員の数なのか。これ
は国会法改正によって、明記する必要がある。 憲法改正案は国民投票にかけられて、過半
数の賛成が必要だが、半世紀がたったにもかかわらず、憲法改正国民投票法がいまだに制定
されていない。これは立法府としての国会の怠慢だ。そういう法的な整備をしっかり行って
初めて九六条が使える。九六条に従って日本の憲法の改正が実現できるということだ。
各党に憲法改正のマニフェスト求める 東京で民間憲法臨調フォーラム
憲法改正の必要を討論する公開憲法フォーラム=3日、東京都中央区の銀座ブロッサム
憲法のすみやかな改正を求める「二十一世紀の日本と憲法・有識者懇談会」(民間憲法臨調・
三浦朱門代表世話人)は三日、東京都中央区の銀座ブロッサムホールで「第五回公開憲法フォー
ラム」を開いた。会場には約千八百人(主催者発表)が詰め掛け、パネリストらの意見に聞き
入った。
主催者代表として、世話人の浅野一郎・元参議院法制局長があいさつ。「今の憲法は借り物。
日本人の思想・表現方法で全面改正すべきだ」と憲法改正の必要を訴えた。
「国会議員に問う!憲法改正の焦点と戦略」をテーマにしたシンポジウムには、ジャーナリ
ストの櫻井よしこ氏をコーディネーターとし、自民党の平沼赳夫(前経済産業相)、葉梨康弘、
民主党の西岡武夫、松原仁の各国会議員が出席。
平沼氏は「革新勢力は、今の憲法があるから日本は平和だと言うが、これはおかしい。日米
安保の庇護(ひご)があったからだ。伝統文化、日本人の誇りを盛り込んだものに全面的に創
(つく)り変えるべきだ」と強調。
また、松原氏が「今の憲法は国民に自信を持たせられず、逆に民族のエネルギーを殺(そ)
いでいる」と指摘した。
西岡氏は改憲への具体的な取り組みとして「政界再編も視野に入れて取り組むべきだ。衆参
の三分の二の発議で国民投票に諮れる、とする現行制度を二分の一でできるようにする手続き
も必要だろう」と提案した。
最後に主催者が(1)参院選では憲法改正・第九条改正を争点としてマニフェストを掲げる
(2)国家ビジョンと政権構想を国民に提示する――などを各党に求める要望書を発表した。
世界日報
2004年05月04日(火)
「自主憲法制定が必要」 憲法記念日「改憲」「護憲」議論活発
施行から五十七回目の憲法記念日の三日、都内各地で集会などが開かれた。北朝鮮の核開発
問題などの脅威で憲法改正の機運が高まるなか、改憲派と護憲派が活発な議論を展開した。
「二十一世紀の日本と憲法」有識者懇談会(代表世話人・三浦朱門元文化庁長官)のシンポ
ジウムで、自民党の平沼赳夫前経済産業相は日本人としての誇りを取り戻すために「憲法は
制定過程に問題がある。改正ではなくて全部改めるべきだ」と自主憲法制定の必要性を強調。
民主党の松原仁衆院議員は戦力の不保持を定める九条を「時代と隔離している」と指摘した。
集会では「九条の改正は不可欠」とするアピールを採択した。
自民党の保岡興治憲法調査会会長は「新しい憲法をつくる国民会議」(会長・愛知和男元防
衛庁長官)の大会で、憲法改正の手続き法である国民投票法案などの議論が進んでいる状況
を説明。そのうえで「憲法改正をめぐる勢力を結集する、新しい動きがあるかもしれない」
と述べ、憲法論議が政界再編に発展する可能性があるとの認識を示した。
一方、公明党の神崎武法代表は都内の街頭演説で「(改憲と護憲の)橋渡しをしながらコン
センサスをつくる大きな役割が公明党にある」と述べた。
共産党の志位和夫委員長は護憲派団体が開いた集会で、「あれが足りない、これが足りない
と憲法に因縁をつけて、国民を改憲論の土俵に乗せ、九条の改悪を無理やり押し付ける悪だ
くみにほかならない」と改正派を批判。
読売新聞
各地で憲法集会、改憲・護憲で活発な論議
学者や経済人らで作る「21世紀の日本と憲法」有識者懇談会(民間憲法臨調、代表世話人
=三浦朱門・元文化庁長官)は3日、都内で自民、民主両党の国会議員によるシンポジウム
を開いた。
自民党の葉梨康弘衆院議員は憲法改正の争点について「利己主義と利他主義の戦いにすべき
だ」と述べ、行き過ぎた人権意識を是正し、家族を尊重する社会づくりをすべきだとの考え
を示した。民主党の松原仁衆院議員は憲法に愛国心を明記するよう求めた。
民間憲法臨調は参院選で、憲法改正問題を公約に掲げることを各党に求める特別アピールを
発表した。
政財界人らで構成する「新しい憲法をつくる国民会議」(会長=愛知和男・元防衛長官)も
都内で大会を開催した。
大会には、民主党議員が初めて来賓に招かれた。同党の武正公一衆院議員は「民主党の若い
議員には憲法改正、自主憲法制定に抵抗感は少ないが、第2次大戦を含め、日本の過去、伝
統・歴史について知識や経験が乏しいのは否めない。先輩の意見を聞き、党内の意見をまと
めていきたい」と述べた。
一方、護憲団体が主催する憲法集会も都内で開かれ、共産党の志位委員長は「古くなったの
は憲法ではなく、自民党政権だ」と改憲を目指す自民党などの動きを批判した。社民党の福
島党首も「9条2項改憲と自衛隊派遣恒久法案がミックスされれば、いつでも、どこでも、
どんな戦争でも自衛隊は参加することになる」と語った。
(2004/5/3/22:16 読売新聞 )