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『21世紀日本の国家戦略合同会議』

議事:●鈴木氏「組織と人間の関係について」レクチャー

 <概略>組織の時代と言われるが、組織も人間によって成り立っており、その関係が重要である。小泉首相の構造改革も、その根は、組織と人間の関係に帰結する。旧制中学4年で終戦を迎え、それ以来、戦犯の問題などを勉学し、今村均大将と出会った。

 軍隊は組織の典型で、よき指導者、よき個人がいれば、組織も発展する。軍隊だから悪いのではなく、組織と人間の関係という観点で考えるべきだ。伊藤博文は、軍とは関係のない人だったが、軍指導者とは幼年からの人間関係があり、彼の時代には問題がなかったが、昭和の初めから、うまく機能しなくなった。その典型が2・26事件といえる。戦後、組織と人間の関係を問い直すべきであった。しかしGHQは官を残して間接統治した。よい面もあったが、禍根も残している。その清算ができていない。これは国家のアイデンティティの問題である。組織と個人の関係を正さないと、本質的な解決はできない。

 現在は小泉人気に寄りかかっているだけで、ケネディの言った「国の為に何ができるのか」が欠落している。今村均大将は、責任の取り方を示した。これが組織と個人のモラルの問題となる。中曽根首相が「辞めることが責任の取り方でない」と言っていって以来、企業トップをはじめ誰も責任を取らなくなった。昔は腹を切ったものだ。

 今は腹を切らない。そういう姿勢で解決できるのかと問いたい。

今村大将の責任の取り方は、軍の責任者としての取り方でなく、部下を死地に追いやったことへの責任の取り方である。これは乃木将軍とつながるものを感じる。

 ●今村氏「父・今村均大将について」  母(均の妻)の父が乃木大将の副官で、当然、乃木大将の話を聞いていたと思う。父は中野正剛とともに、支那事変をやめようと運動していた。日支事変をやめさせようとしてできなかったので、その当時から自責の念を抱いていた。そうした経緯から第二次大戦も早く終わらせようとしたが、できなかった。早くから僧侶になることを考えており、大森永平寺管長に感化を受ける。上海事変のときからすでにそうだった。

<参加者の主な意見>

 ●中島慎三郎=軍事という視点で政治を見ない限り、謀略にやられてしまう。

欧米では謀略の研究をやっているのに、日本にはそうした視点がない。だから日本外交は失敗ばかりだ。

 ●鈴木博雄=米国も失敗ばかりやっている。スケールの大きな目で見ていかないといけない。日本を主体的な国家にしていく必要がある。

 ●大橋武郎=戦争に対する深刻な反省がない。だから今後、どうするかの検討がなされていない。日米の制服OBの集まりでは、米国側から日本は腰が据わっていないとの批判がでる。集団的自衛権問題などでそうだ。戦略がない。

 ●阿部正寿=日本をどうするかというビジョンがないから戦略が出てこない。

国家ビジョン、国家戦略を構築しなければならない。戦後総決算がまったくできていない。

 ●高橋守雄=悲憤慷慨するだけでなく、研究、コーディネート、具体化という段階的なプロセスが重要だ。戦略づくりのための人脈づくりから始める必要があるのではないか。

<論議の大勢>

 国家戦略を軍事を軸につくっていかねばならない。日本にはこれまでできなかった真の国家的シンク・タンクづくりに当たっていく必要がある。何の為の戦略かという価値観をはっきりさせることが大切である。そのうえで政策提言ができるように人脈ネットワークを形成する。鈴木先生を中心に事務局は大脇氏が担当するのが相応しい。

参考資料;牛村圭教授の博士論文『文明の裁きを超えて』第11章"戦犯の慈父、
今村均大将の回想録"、(今年3月、東大教養学部で発表)
『組織に負けぬ人生ー今村均大将に学ぶー』(日下公人、PHP文庫)
『永遠なれ、日本』中曽根康弘・石原慎太郎共著、PHP研究所