第19回未来構想戦略フォーラムセッション1)発題レジメ
2003年8月6日(水) 港区商工会館会議室
「日本の農業の将来」 森田松太郎
1. 日本の食の現状
日本農業の自給率は2001年度現在カロリーベースで40%、これを
2010年度には45%に引き上げることが閣議決定されています。
品目別に見た自給率の現状と2010年度目標は下記のとおりです。
自給率
2001年 2010年
米(主食用) 100 100
小麦 11 12
大麦・裸麦 8 14
甘藷 98 97
馬鈴薯 80 84
大豆 5 5
内食用 26 21
野菜 82 87
果実 44 51
内りんご 58 65
みかん 96 101
牛乳・乳製品 65 75
砂糖 32 34
茶 84 96
資料:農水省「食料・農業・農村基本計画」
世界人口の推移 世界の人口は増加の一途をたどり2002年7月現在62億人と推定
されています。栄養不足人口は8億人を越えているとされ、内開発途上国は7億7千万人
と95%を占めています。穀物生産高は1960年の8.8億トンにたいし2000年には
20.6億トンと2.3倍に増えていますが、増え方は鈍化しています。
鈍化の原因: 農地の開発困難、地球温暖化、水資源開発困難、異常気象の多発等
2002 60億人
2010 62億人
2030 82億人
2050 92億人
国連:Population and Vital statistics report 2000,2001 World population prospect 2000
92億人をどのようにして食べさせることができるか?
生活水準の向上は畜産物消費の拡大をもたらし、飼料用穀物の需要を拡大する。
人口の増加と生活水準の向上は他方で貧困と飢餓、紛争と戦争の原因になるのではないか。
人口の増加は何処まで続くのか
世界の農産物純輸入額 2000年
日本の現状を考えてみよう
日本は世界一の農産物純輸入国である。食物供給は外国に頼らざるを得ないのが
現状である。世界の中で,特に一流国の中で日本の食料事情はある意味で世界の問題児
といえるかも知れない。
日本 346億ドル ドイツ 103 イギリス 92
韓国 68 ロシヤ 62 アルゼンチン −95
フランス −99 アメリカ −115 オランダ −117
オーストラリヤ −117 資料:FAO
主要先進国の穀物自給率
世界第2の経済大国日本におけるカロリーベース自給率の低さは憂慮すべきことである。
このままでよいのか、仮に海上輸送が何らかの条件で困難になった場合、食料はどうなるか。
終戦後の食料不足の再来である。
オーストラリヤ 280% フランス 191
アメリカ 133 ドイツ 126
イギリス 112 スイス 61
オランダ 29 日本 26
アイスランド 0 農水省試算
農林水産省の2001年に実施した調査によると、全国1000世帯の食品ロス率は
5.8%である。内訳は、廃棄3.5%食べ残し2.3%で食品ロスの6割は廃棄で
あった。食料ロス率は改善されるか。
2.日本の農業
農業就業人口の推移 1960年には1196万人であった。40年で4分の1に減少した。
1970年 811万人(男379万人 女432万人)(65歳以上12.1%)
1980年 506万人(男242 女262) (17.2%)
1990年 392万人 (男194 女198 ) (29.3%)
2001年 285 万人 (男154 女131) (45.8%) 資料:総務省 労働力調査
農業従事者の高齢化は早いスピードで進んでいる。農業就業人口に65歳以上が
占める割合は1970年に12.1%であったものが、2001年には45.8%に
達している。日本農業の担い手不足が深刻化してきている。解決策はあるか。
労働をロボット等で置き換えることができるか。
耕作放棄地・不作付け地
耕作放置地や不作付け地の増加が問題である
耕作放棄地 % 不作付け地 %
1995 162千ha 3.8 156千ha 3.9
2000 210 5.1 278 7.4
仮に輸入農産物を国内で生産するとしたらあと1200万haの農地が必要と
試算されている。これは日本の耕地面積の役2.5倍日本の国土面積の約3分の1にあたる。
農家数の減少と高齢化が進む中で規模拡大を進める農家が増加している。
例えば北海道は次のようである。 農林水産省「農業構造動態調査」2002.2.11
1ha未満 1-3 3-5 5-10 10-20 20-30 30以上
9.2% 10.5 10.8 20.6 19.9 10.8 18.1
3、今後の日本農業の進む道
1. 自給率をあげるために単位耕作面積をふやし、生産効率を向上させる
2. 農地の集約を考える。例えば農協等で借り上げ大規模農業をめざす
3. 規模農地(段々畑)等には補助金をだす
4. 地適産を考える
5. 輸入に対抗できるコストの引き下げをはかり、品種改良を図る
6. 輸出農産物を戦略的に策定し、品種を改良する等の施策を講じる